日々の気づき/ブログ
製造業の失われた30年とデジタル化の影響2
【製造業の失われた30年とデジタル化の影響 2】
以前、「製造業の失われた30年」について考察を書きました。
結論として、日本が得意としてきた“すり合わせ型”のものづくり…、つまり「高度で正確」な職人技を前提とした製造スタイルが、デジタル化の波に飲み込まれたのではないか、という話です。
デジタル技術の進化によって、これまで経験や勘で行われていた“高度で曖昧な調整”が、仕様書で正確に定義できるようになり、その結果、海外勢に追い越された。そんな構図です。
参考までに、日本の国際競争力とネット普及(≒デジタル化)の関係を示した図を下に置いています。
スマホ・デジカメ用レンズの例
この話に関連して、思い出した例があります。
スマートフォンやデジタルカメラ用のレンズです。
ざっくりとした説明になりますが(多少の誤差はご容赦ください)、かつて日本は高精度なガラスレンズを得意としていました。
光軸や収差を極限まで抑える、まさに“匠の技”が光る分野です。
ところが、デジタル画像処理の進化によって、レンズのわずかなズレや歪みはソフトウェアで補正できるようになりました。
その結果、安価なプラスチックレンズでも十分な性能が得られるようになり、ガラスレンズの優位性は急速に薄れていったのです。
「正確さ」の定義が変わった
つまり、デジタル化によって「レンズが光学的に正確である必要はなく、撮影結果として正確であればよい」
という時代になった、ということです。
“正確無比なものづくり”という日本の強みが、ソフトウェアによって補えるようになってしまった。
その結果、高価で高度な製造は、より安価な東南アジアへと流れていったわけです。
『レンズが光学的に正確なもの』→『撮影結果として正確であれば良い』
さあどうする?
しかし近年、東南アジアの製造技術が驚くほど進歩しており、安かろう悪かろう」だった時代はすでに終わりつつあります。日本のものづくりは、再び追い上げられる立場に立たされているように思います。だから “日本の強みとは何か”を見つめ直す必要があると思います。
実際に、新規事業創出のコンサルティングの現場では、自社の強みとはなにか?というのをまず最初に考えるところからスタートしています。
一緒に考えてみませんか?
新規事業創出:地方活性化のためのトラフグの陸上養殖について
トラフグの陸上養殖について
7月に、富山県氷見市で養殖事業の会社を立ち上げました。
約5年前にコンサル先の企業と人工海水を共同開発したことをきっかけに、養殖メーカーとのお付き合いが始まりました。私自身は、地域活性化の構想や会社の利益の仕組みづくりを担い、企画を進めてきました。
地方の活性化が大きな目的のため、大企業のような大規模なものではなく、地域の特長を活かした養殖を目指しています。
地域ブランド化
ふるさと納税との連携
地元の旅館や飲食店との協働
地域産物を餌に取り入れることでの差別化このモデルを他の地域にも展開できればと考え、活動を続けています。
企業様や地方自治体など、ご関心のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
なお、私自身は半導体や素材が専門なのですが、新規事業って全く同じなんですね。
お魚さんからパワー半導体まで頑張ります !
ピッチイベントに参加しました。
世界を驚かせたxMEMSの「オールシリコン」マイクロ冷却チップ
世界を驚かせたxMEMSの「オールシリコン」マイクロ冷却チップ
半導体の高性能化が進む中、課題のひとつが熱対策です。CPUやGPU、メモリ、バッテリーなどの発熱は、製品性能や寿命に直結します。そんな中、米国のxMEMS Technologiesが開発したXMC-2400 μCooling chipは、世界中のMEMS技術者を驚かせました。
このチップは、もともとxMEMSが培ってきた圧電MEMS技術をマイクロスピーカーから転用したもの。半導体パッケージ上に載せられる世界初のオールシリコン製ファン・オン・チップです。厚さはわずか1mm、超音波帯域で駆動するため、耳に聞こえる騒音が発生しません。
技術の仕組み
圧電MEMS膜を超音波帯域で振動させ、高周波の圧力変動を発生。この変動をマイクロバルブで同期制御し、非対称のパルス気流を作ります。従来のような機械ベアリングがないため
・超薄型
・低振動
・静音
といった特長を実現しています。
応用の可能性
このμCooling chipは、特に狭いスペースでの冷却が求められる半導体パッケージに最適です。スライドの例では、CPU/GPUやメモリ、バッテリーの熱源上に直接配置し、効率的に放熱できることが示されています。従来の冷却ファンでは難しかった、薄型デバイスや静音が求められる機器への応用が広がりそうです。
まとめ
xMEMSのXMC-2400は、冷却技術におけるパラダイムシフトを予感させます。超音波駆動の無接触ファンは、従来のメカニカル構造の常識を覆し、電子機器の設計自由度を大きく広げる可能性を秘めています。サンプル出荷も始まっており、近い将来、私たちが手にするデバイスにもこの技術が搭載される日が来るかもしれません。
MEMS技術者の皆さん、一緒にこれを超えるようなMEMSを作りましょう!
デジタル化と信頼の価値の変化
先日のブログで、ものづくりにおけるデジタル化の影響について話をしました。
今回の話は、それをさらに掘り下げた内容です。
あるSNS投稿で、「商社から低コストばかりを求められ、事業が成り立たない!」という声を見かけました。この背景にも、やはりデジタル化の影響があると感じます。
かつては、顔なじみの業者や商社との“長年の付き合い”や“信頼関係”をベースに取引が行われていました。多少コストが高くても、「あの会社なら大丈夫」という信用で選ばれていたわけです。しかし、デジタル化によって状況は大きく変わりました。
世界中の企業とワンクリックで比較される仕様が明確になりました簡単なものはどこでも作れるオーバースペックな品質は仕様に現れず、差別化にならない信頼や信用も、納期と仕様を満たしていれば、価格競争に吸収されてしまうこうして、“目に見えない価値”が通じにくい時代になっています。結果、製品は仕様通りに動けば十分とされ、コストがすべての判断基準になりやすくなりました。仮にすぐに壊れたとしても、「設計の問題」と片づけられるかもしれません。
では、どうするか?
既存製品を作り続けるなら、海外メーカーに勝てるような超低コスト化を目指すしかありません。ですが、それも限界があります。だからこそ、「コストではない何か」で勝負しなければならない時代です。
私は、「意味のあるもの」「価値の本質」に立ち返る必要があると思います。価格では測れない新しい価値、新しいニーズを見つけ出し、それを形にしていく。それが、これからのものづくりに求められている姿ではないでしょうか。
社会は変化しています。競争も厳しくなっています。ですが、だからこそ今、新しいものを生み出すチャンスもまた広がっています。
一緒に、新しい“意味あるものづくり”を考えてみませんか?



