日々の気づき/ブログ

2025-06-10 10:11:00

製造業失われた30年の考察

製造業の失われた30年の考察
〜1990年代から現在に至るまでの日本製造業の衰退について〜
政治の失策、社会構造の変化、少子化など、さまざまな理由が日本の製造業の衰退原因として挙げられていますが、私は少し異なる視点から捉えています。


【結論】
日本が得意としてきた「すり合わせ型」のものづくりは、デジタル化の進展により徐々にその役割を終えつつあります。この変化は、製造業全体がイノベーションのジレンマに直面した結果と捉えることができます。すり合わせによるアナログ的な最適化は、より再現性の高いデジタル技術の進化により、段階的に置き換えられてきました。以下に、デジタル化の流れを概観します。


[デジタル化の進展]
1990年代から始まったデジタル化の波は、従来のすり合わせ型プロセスの必要性を減少させました。設計レシピと標準的な組み立て方法だけで製品を量産できるようになり、アナログ回路はデジタル回路へと置き換えられていきました。
さらに、デジタル技術を習得した海外の技術者たちが、同等もしくはそれ以上の製品を、より迅速かつ効率的に開発・製造できるようになったのです。
ここから東南アジアの国々は大きく伸び始めます。当然日本の円高による海外進出も影響しています。
日本のすり合わせ型のアプローチには今なお有効な場面もありますが、全体としてはその必要性が減少しています。また、円高の影響もあり、日本の技術や製造ノウハウが海外へと流出する傾向も強まりました。

※富士フイルムの銀塩写真がデジタルカメラに置き換わった事例は、この構造的変化を象徴するわかりやすいケースでしょう。


[材料分野の強み]
すり合わせの技術が依然として活きる分野の一つが材料開発です。日本が今なお素材分野で優位性を保っているのはこのためです。しかしながら、今後デジタルトランスフォーメーション(DX)が材料開発の手法や評価手段にも及ぶことで、この分野もまた海外との競争が一層激しくなることは避けられないでしょう。

[自動車産業の現状]
自動車産業は、現在も日本の基幹産業の一つですが、電気自動車(EV)の登場によって技術構造が大きく変化しています。EVは、ソフトウェア制御とデジタルコンポーネントの組み合わせによって成り立つ製品であり、従来の内燃機関のようなアナログ技術の「すり合わせ」は不要です。
エンジン技術が残る限りは、日本の自動車産業も一定の競争力を維持できると考えますが、今後はその延命も難しくなる可能性があります。

 

[まとめ]
日本の製造業は、「すり合わせ」という強みを最大限に活かして発展してきました。しかし、それがゆえにデジタル化というパラダイムシフトへの対応が遅れ、結果として30年間にわたる停滞を招いたと私は考えています。

だからどうするか? というのは重要です。一緒に新規事業を考えましょう!



参考としてインターネットの普及の図を示します。関連しているように思えます。

 

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2025-04-25 12:51:00

圧電MEMS研究会 2025年6月3日 (火) @神戸

圧電MEMSに関する講演会のお知らせ

https://www.research.kobe-u.ac.jp/eng-dynamics/piezomems/meeting/31st.html

日時: 2025年6月3日 (火) 13:30~16:45

場所:神戸三宮センタープラザ9階 KOBE Co CREATION CENTER  Room A,B

神戸市中央区三宮町1丁目9番1号センタープラザ9階

(*オンライン併用)

 

13:30-14:30   スパッタ法による Nb-PZT 薄膜開発の経緯:成膜の原理と装置の基礎から考える

 

上記の演題でお話させていただきます。

古くは大学時代の開発から、KRI社、富士フイルムでの開発のときのコンセプト、考え方を含めてお話をさせていただきます。

若い研究者から圧電材料の専門家まで聞いていただけると思います。

 

2025-04-22 22:00:00

地方活性化と陸上養殖

三陸地方のある地域で、陸上養殖プロジェクトをスタートさせることになりました。

私はこの取り組みの最初の仕掛け人として、現在はボランティアで関わっていますが、上手く関連メンバーと地方がハマりました。

地元でふぐやその他の魚種を陸上養殖し、ふるさと納税の対象にしたり、地域の特産品を活用した飼料でブランド化を目指します。

さらに、温泉との連携や、道の駅などでふぐ料理を提供することで、町全体の賑わいにつながることを期待しています。

流通についても、関西から関東までの広域展開に加え、必要に応じてホームページなどを活用し、輸出にもチャレンジしていく予定です。

成功するかどうかは未知数ですが、地方自治体の首長さんも賛同してくださっており、地元企業との連携も進みそうな手応えを感じています。

これは本業とは異なる取り組みですが、人と人をつなぐことで日本全体が元気になればうれしく思います。

 

新規事業創出が本業なので本業と言えば本業ですが、さて、半導体デバイスの開発という真の本業も頑張らねば……

2025-02-26 19:15:00

新規事業の進め方 技術の棚卸し・市場開拓・評価方法

最近、化学メーカー、素材メーカー、電機メーカー などの企業様から、新規事業に関するご相談をいただくことが増えています。特に、以下のような悩みを抱えている企業が多いです。

よくある新規事業の悩み
① 既存事業が衰退する中で、どう強みを活かして新規事業を進めるべきか?
② 技術の棚卸しはどうやるのか?
③ 新規事業のネタ・マーケティングはどうやるのか?
④ テーマの良し悪しはどこで誰が判断するのか?
⑤ 将来性の見極め・用途の見極めの助言・指導


大手コンサルと異なる支援の形:「伴走型」の支援
一般的なコンサルティング会社では、
・方向性の提示
・市場データの提供
・ケーススタディの紹介
などが中心ですが、それだけでは新規事業は進みません。

私は 「伴走支援」 の形をとり、
・アイデア出しのやり方、実践
・事業化の仮説検証の進め方の指導
・参加メンバーの教育(新規事業の考え方、判断基準、マーケティングの基本など)
・実際の顧客ヒアリングの支援
・新規事業の評価フレームワーク導入
など、実際に手を動かしながら、企業の内側から新規事業を生み出せる力を育てる ことを重視しています。

商品化もいくつかあり、嬉しい限りです!

2024-10-06 20:31:00

知財(特許)をマーケティング/新規事業創出に利用する その6 ~富士フイルムの銀塩写真から化粧品への展開事例~

富士フイルムが銀塩写真の技術を化粧品へ展開した事例を考えてみましょう
ただし、実際には特許を検索して生み出したのではないのですが、このやり方でも生み出せますので示します。

ステップは以下

1.特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
2.ターゲットとする分野/領域を抽出(バックキャスティング法も参考にしてください)
3.キーワードを掛け合わせて、特許の検索と読み込み


やってみましょう!
1.
銀塩写真技術のコア技術のキーワードとして、
仮に分散、水溶液、微粒子、コラーゲン etc  を挙げます。
検索に用いるだけなので結果に応じていろいろと選定してください。

2.
ターゲットとする分野は「化粧品」です。なぜ化粧品を選んだかというのは、伸びる市場であったという理由です。これもトレンドやバックキャストでいろいろと市場は選べると思います。

3.
特許検索をしてみます。
富士フイルムの販売は2006年頃ですので、2003年以前の特許を検索してみます。

分散☓化粧品だと約6000件の特許が出てきます。
少なくとも化粧品に分散技術が使えることがわかります。
研究者や技術者は「あ!オレの技術が化粧品に使える」とわかるわけです。それだけでも少しやる気が出てきます。



6000件の特許を読み込むのは大変なので、「コラーゲン」のキーワードを加えます。
そうすると52件まで絞られます。
ここで読み込んでいきます。



その時のポイントは、
強みの技術が化粧品分野にどう使われているか?
自社の強みが他社よりもうまく活かせるか?
強み技術でうまく課題解決、良い化粧品ができそうか?
私ならもっとうまく開発できるのでは?

などと想像しながら読み込むことです。
特許の中にズバリの答えはなくても、伸びる市場に自社の強みを活かせるというのがわかれば具体化して考えるべきです。

あくまでも後付の事例ですが、富士フイルムは強みである分散を有効に使って新しい化粧品を開発しているというのを特許の検索から引き出すことができました。

以上のように、特許検索をうまく利用すると新規テーマを考えることができます。

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