日々の気づき/ブログ

2026-04-18 11:32:00

AIで埋もれた技術の強みを掘り起こす ― 富士フイルムの圧電特許を例に、自社・他社分析を考える ―

最近、AIを使って企業の技術や特許を分析する機会が増えています。
以前は、特許を1件ずつ読み、分類し、用途や狙いを整理しながら、その企業の強みや方向性を考える必要がありました。かなり時間のかかる作業です。

もちろん、最終判断は人が行うべきです。
ただ、AIを使うことで、大量の情報をまず俯瞰し、全体像を短時間でつかむことができるようになりました。

今回、富士フイルムの2010年以降の圧電関連特許を整理してみると、約600件規模の出願がありました。これだけでも、圧電が単発テーマではなく、長年積み上げてきた重要技術領域であることがわかります。これらの特許をダウンロードしてAIに読み込ませて分類してみました。

まず、全体像をざっくり見ると、次のような広がりがありました。

(以下は、公開特許情報のみをAIで整理・要約した結果です。筆者自身の社内経験はインプットしていません。)

 

まずは、AIで整理した全体像を簡単に示します。

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この結果から見えてきたのは、富士フイルムが単に「圧電材料を持っている会社」ではないということです。むしろ強いのは、圧電を実際に使えるデバイスに仕上げる技術です。
その方向性を示す特許が多く見られました。特許の中身を見ていくと、PZT系薄膜や積層体をベースにしながら、電極との界面、シード層、酸素制御、低電圧駆動、耐久性向上など、細かな工夫が積み重ねられています。これは、材料単体の性能競争というより、デバイスとして安定に動かし、量産に載せるための技術開発です。

さらに、特許の中身から見えてきた強みを整理すると、次のようになります。

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特に印象的だったのは、インクジェット関連の厚みです。
この分野では、高速駆動、耐久性、ばらつき抑制、ヘッド全体との整合が重要になります。つまり、研究室で「動いた」だけでは不十分で、壊れず、安定に、量産で使えることが求められます。富士フイルムは、まさにそこに強みを持っているように見えます。

さらに、医療用超音波や音響デバイスへの展開もありました。
一つの用途だけで終わらず、別市場へ横展開できる点も、技術基盤の強さを感じさせます。

さて、こうした分析は、他社分析だけでなく、自社分析にも有効です。自社の特許や技術資料をAIで整理してみると、当たり前と思っていた技術が実は強みであり、別の市場で価値を持つ可能性が見えてくることがあります。逆に、広く使えると思っていた技術が、実は用途の狭い技術だとわかることもあります。新規事業は強みに立脚して考えるべきであり、その意味でもこうした整理は重要です。

私自身、コンサルティングの現場では、企業の技術を整理し、その強みや抜けを見ながら、新しい用途や業界との結びつきを考える支援をしています。特に素材、部材、製造技術のようなBtoB分野では、まず自社技術の構造を整理し、どこで勝てるかを見立てることが重要です。AIはその初期整理を大きく加速してくれる道具になってきました。かなり効率よくできるようになりました。

AIが答えをそのまま出してくれるわけではありません。
だからこそ、AIで全体像をつかみ、人が技術の本質を読み解き、事業の可能性へつなげることが重要です。

これからは、AIを「答えを出す機械」としてではなく、自社や他社の技術を整理し、強みを見つけるための思考支援ツールとして使うことが、ますます重要になっていくと思います。

技術を特許という切り口で整理し、強みを見つけ、どの市場につなぐかを考えてはじめて、事業の可能性が見えてきます。自社技術の棚卸しや、新規事業のテーマ探索、他社技術の見立てに関心のある方は、お気軽にご相談ください。

 

2026-04-11 14:18:00

素材系BtoBの初期ネタ出しは、シーズ起点の方が機能しやすい

素材系BtoBの初期ネタ出しは、シーズ起点の方が機能しやすい

素材系の会社の新規事業のネタ出しでは、最近、デザイン思考や顧客起点の議論をよく耳にします。
しかし、素材BtoBの現場では、必ずしもうまく機能していないケースも少なくないようです。実際、私の周りでも複数の企業からそのような話を聞いています。大手コンサルティング会社が主導している場合でも、現場がしっくりきていないことがあるようで、その点には少し驚かされました。

もちろん、デザイン思考そのものが悪いわけではありません。
実際、私自身もデザイン思考を活用し、素材とデザインを組み合わせた商品でグッドデザイン賞を受賞した経験があります。ですから、手法としての価値は十分に理解しています。

ただし、素材BtoBの初期ネタ出しにそのまま持ち込むと、やや遠回りになることがあります。
問題は手法そのものではなく、使い方です。

素材は最終顧客の感情だけで選ばれるものではなく、性能、工程適合、信頼性、コスト、供給性といった要素で採用が決まります。
そのため、素材系の会社では、まず自社のシーズを細かく分解し、その強みを言語化したうえで、伸びる市場や用途と掛け合わせる方が、新規事業のネタ出しとしてははるかに機能しやすいと感じています。

素材系企業の新規事業支援では、技術の構造化から用途探索、関連特許の確認まで含めて伴走しています。自社の強みを活かしたテーマづくりにご関心があれば、お気軽にご相談ください。

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2026-04-04 20:47:00

社内の「ホントか?」を黙らせる、唯一無二の解決策とは?

3/21のブログ「自主研究(闇研究)を実用化する方法:研究開発で成果を出す5つのポイント」について多くの反響をいただきました。

https://fujii-tech.com/diary/221679

今回は、その中でも「最も重要なことは何か?」について深掘りしたいと思います。

結論から申し上げます。

それは闇研究であっても、正式なプロジェクトであっても変わりません。

「顧客を見つけ、ファンにすること」。これに尽きます。

 

 「社内の声」と「顧客の声」の決定的な違い 

研究開発の現場では、上層部から幾度となくこんな質問を投げかけられます。

    「その性能は、本当に実現できるのか?」

    「コスト競争力は本当にあるのか?」

    「他社には真似できない、オンリーワンの技術なのか?」

これらの問い(ホントか?)に対し、社内向けの資料であれば、見せ方次第でいくらでも「取り繕う」ことができてしまいます。しかし、顧客からの評価には「第三者の厳しい目」と「ビジネスの利害関係」が伴います。 嘘やごまかしが一切通用しないからこそ、そこには絶対的な信頼が宿るのです。

 

顧客がファンになれば、会社はプロジェクトを潰せない

私が以前開発したあるデバイスの事例をお話しします。

そのデバイスは圧倒的な性能を誇っていましたが、実は「水に弱い(耐水性が低い)」という、品質保証項目をクリアできない致命的な弱点がありました。

普通なら、この段階で開発中止です。しかし、試作段階でその性能に惚れ込んでくれた顧客は、こう言ってくれました。

「耐水性の問題はこちらでカバーする。構造工夫で回避するから、とにかくその性能を活かして実用化したい」 

顧客が「どうしても欲しい」と言っているテーマを、会社がみすみす潰すわけにはいきません。顧客の熱狂が伝わった瞬間、それまで「闇研究」だったプロジェクトには、会社からの正式なバックアップという強力な追い風が吹き始めました。

 

サンプルができたなら、今すぐ外へ出よう

もし貴方の技術が優れているのなら、必ずファンになってくれる顧客は存在します。

完璧な製品を待つ必要はありません。サンプルができた段階で、まずは顧客のもとへ足を運びましょう!

社内の「ホントか?」という疑念を、顧客の「いつから使える?」という期待に変えていくこと。

これこそが、闇研究を「日の当たる場所」へ導く、最短にして唯一の道だと思います。

 

新規事業のテーマ出しでお悩みの方は、まずは無料相談へ

https://fujii-tech.com/free/fee

 

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2026-03-28 23:26:00

予算ゼロからの突破口。外部機関を「第二のラボ」にする方法

予算ゼロからの突破口。外部機関を「第二のラボ」にする方法

はじめに 

前回、「自主研究(闇研究)」を実用化するポイントについてお話ししました。しかし、ここで必ずぶつかる壁があります。

それは、「予算(カネ)と設備がない」という現実です。

会社に認められていないテーマであれば、当然、高価な実験装置を買ってもらうことは不可能です。では、どうすればいいのか? 答えはシンプルで「外の力」を利用するです。要は中ではなく外です!

 

部長に却下されてからが、本当のスタート

私自身の事例をお話しします。 かつて無機位相差板の自主研究を始めた際、私はまず上司に「小型の製造装置を購入したい」と相談しました。しかし、返ってきた答えは予想通りの「却下」。実績も予算もない段階では、当然の反応です。

そこで私は、視点を社外に向けました。調査の結果、ある県の工業試験場(公的試験研究機関)に、私のアイデアを形にできる装置があることを突き止めたのです。

 

公的機関は技術者の「最強の味方」

実際に足を運んでみると、そこには経験豊富な専門の研究員の方がいらっしゃいました。こちらのアイデアと実験条件を正直に伝えたところ、快く協力していただけることになったのです。

公的機関を活用するメリットは、主に3つあります。

1.格安の利用料: 国や自治体の施設は、民間の委託試験に比べて驚くほど低コストで利用できます。私の場合は、部長を粘り強く説得し、2年間で計70万円ほどの予算をなんとか確保して検証を進めました。

2.専門家の知見: 装置を借りるだけでなく、研究員の方との議論を通じて、自分一人では気づけなかった知見が得られることもあります。

3.Win-Winの関係: 公的機関側にとっても、企業との連携実績や実用化への貢献は重要な評価指標になります。こちらが本気であればあるほど、彼らも熱心に応えてくれます。

結果として、この外部連携による実験は非常にうまく行き、実用化への大きな足がかりとなりました。

 

大学やプラットフォームの活用

この「外部ハック」は、工業試験場に限りません。大学の研究室も有力な候補です。先生を説得して共同研究のスキームに乗せる必要はありますが、より深い理論的裏付けが得られる可能性があります。また、最近は設備の共用化が進んでおり、以下のようなプラットフォームで全国の高度な装置を探すことができます。

ナノテクノロジープラットフォーム(Nanonet

高度な計測・加工装置を全国どこからでも利用できる仕組みです。

東北大学 共用設備(MU-SIC

材料・デバイス系の方には非常におすすめの環境です。

 

まとめ:予算や設備がないなら、探しに行こう 

今の時代、自社に予算がないことは、研究を諦める理由にはなりません。

「社内でダメなら、外でやる」 このくらいの図々しさと行動力が、新しい事業の芽を育てるのだと私は確信しています。ぜひ一度、近くの公的機関を覗いてみてください。

 

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2026-03-21 22:04:00

自主研究(闇研究)を実用化する方法 : 研究開発で成果を出す5つのポイント

自主研究(闇研究)を実用化する

皆さんの会社では、「闇研究(自主研究)」は認められているでしょうか。
企業の研究開発において、公式テーマ以外の自主研究からイノベーションが生まれるケースは少なくありません。
 

私の前職では明確な制度はありませんでしたが、※3Mの「15%ルール」のように、個人の裁量で研究テーマに取り組む文化がありました。

 

自主研究から実用化までのプロセス(実例) 

私は2005年頃から2008年頃にかけて、液晶プロジェクタ用の無機位相差板を自主研究として開発し、最終的に実用化しました。

プロセスは以下の通りです。

・門からの相談をきっかけにテーマ設定
 社内で対応できない課題を引き受ける
・自の材料・プロセスを提案
・去検討のヒアリング
 「実用化は困難」との評価
 実験条件と材料に改善余地ありと判断
・期検証と同時に特許出願(知財戦略)
・算がない中で外部機関を活用
 2年間で70万円程度で検証
 低コストでのラピッドプロトタイピング
・業開発部と連携し顧客開拓
・顧客先でコントラスト数倍向上という成果
・耐久性課題は顧客側が許容し採用決定
・社内に受け皿がないため子会社で量産化 

 

自主研究を実用化するための5つのポイント 

研究開発の成功事例として、重要なポイントは以下です。

・アイデアを出す(テーマ設定力)
・低コストで検証する(ラピッドプロトタイプ)
・特許を出願する(知財戦略)
・顧客の声を直接聞く(市場適合性)
・顧客が欲しいと言う状態を作る(事業化の鍵) 

特に、顧客ニーズと知財の両輪が揃うと、社内プロジェクトは止まりにくくなります。  

技術者のキャリアとしての自主研究自主研究は単なる「余暇の研究」ではありません。
研究開発における新規テーマ創出力・事業化力を高める実践的なトレーニングです。むしろ、公式テーマだけでは得られない経験が蓄積されます。

 

まとめ : まずはアイデアと特許から始める

 闇研究でも自主研究でも構いません。
重要なのは、アイデアを形にし、特許として押さえることです。そこから研究開発のストーリーは動き始めます。若い技術者・研究者の方は、ぜひ一度挑戦してみてください。

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※3M15%ルールとは

勤務時間の約15%を本業以外の研究やプロジェクトに活用できる文化(不文律)。
社員の自由な発想を促進し、「ポスト・イット」などの革新的製品を生み出してきたことで知られています。

 

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