日々の気づき/ブログ
意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)
意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)
― 研究開発と経営戦略の方向性を同時に決める道具 ―
SWOT分析は古い。昔からよくありますからね。
でも、本当に使いこなせていますか?形だけやって終わっていませんか?
強み・弱み・機会・脅威を書き並べただけでは、経営の意思決定はできません。
SWOT分析の本質は「整理」ではなく、経営戦略や研究開発戦略の方向性を決めるための掛け算です。
つまり、クロスSWOT(クロス分析)が重要になります。
戦略は掛け算でしか決まらない(クロスSWOT)
重要なのは4つのクロスです。
・SO(強み×機会):攻める(成長戦略)
・WO(弱み×機会):補完・改革する(変革戦略)
・ST(強み×脅威):守りながら差別化する(防衛戦略)
・WT(弱み×脅威):縮小・撤退する(撤退戦略)
経営判断とは、結局のところ「このどれを選ぶか」を決めることです。
研究テーマの方向性も同じ(研究開発戦略にSWOTを使う)
研究所でよくある議論は、
「この技術は面白い」
「世界初だ」
で止まります。
しかし、経営視点で問うべきは次の3点です。
・その技術は、どの機会(市場・規制・顧客課題)と掛け算になるのか
・どの脅威(競合・価格下落・代替技術)に対する武器になるのか
・弱み(量産性・コスト・販売力・信頼性)と組み合わさって失速しないか
ここから「だからどうする?」「何に注力する?」「何は捨てる?」という、研究テーマの選定・優先順位付けに落とせます。
例えば、
・独自材料技術 × 環境規制強化
→ SO:攻めの研究テーマ(用途開拓・先行投資)
・高性能だが高コスト × 価格競争激化
→ WT:やらない判断(撤退・縮小・別市場へ)
ここまで整理すると、研究テーマの優先順位が変わります。
さらに言えば、SWOT分析は単なる研究整理ツールではなく、事業ポートフォリオの整理(伸ばす/立て直す/守る/やめる)にも使えます。
SWOT分析で会議/経営の質が変わる(意思決定に効く)
よくある会議は、強みの話で終わる、市場の話で終わる、技術自慢で終わる、ということが多くないですか?
クロスSWOTをすると、「では、攻めるのか、守るのか、やめるのか?」まで踏み込めます。
戦略の選択肢が可視化され、経営会議で意思決定がしやすくなります。
SWOTが古いのではなく、浅いだけ
SWOT分析が使えないのではありません。
掛け算までやって、経営戦略・研究開発戦略に落とし込めていないだけです。
研究の方向性、事業の方向性、撤退判断。
それらを同時に整理できるシンプルな道具は、実は多くありません。
SWOTは、本気で使えば今でも十分に戦略を生みます。
意外と、使えます。
次に経営会議でSWOTをやるなら、「クロスSWOTで4象限の戦略(SO/WO/ST/WT)まで決める」と決意してください。
“整理”ではなく“意思決定”の道具になった瞬間、SWOT分析は化けます。
ぜひ使ってみてください!
新規事業は局地戦 ~ランチェスター戦略で考える~
新規事業は局地戦~ランチェスター戦略で考える~
新規事業でいちばん大事なのは、最初から「局地戦」だと割り切ることです。
ここを外すと、どれだけ良い技術や良いアイデアがあっても、競合の土俵で消耗して負けてしまいます。
特に大企業ほど、新規事業を「広域戦」で考えて失敗しがちです。既存事業の感覚のまま「市場を広く取りに行こう」「用途を広げよう」としてしまうからです。
局地戦・広域戦とは何か(ランチェスター戦略の発想)
局地戦・広域戦は、ランチェスター戦略の考え方です。
ビジネスを戦いに例えると、次のように整理できます。
・局地戦:一点集中で「勝てる場所」だけで戦う
(顧客・用途・条件・地域・チャネルなどを絞る)
・広域戦:広い市場で総合力勝負をする
(ブランド、資金、販路、人員が揃った“強者向け”)
違いはシンプルで、弱者は局地戦、強者は広域戦です。これがランチェスター戦略です。
新規事業は「大企業でも弱者」になる
ここで重要なのは、新規事業は大企業がやっても弱者になるという点です。
新規領域では、予算・人・実績・顧客接点が限られます。社内でも優先順位が上がりにくく、意思決定も遅れがちです。つまり、既存事業で持っている「強さ」は、新規領域にはそのまま持ち込めません。
だから新規事業は、会社規模に関係なく 「弱者の戦い方=一点集中」 が基本になります。
一方で大企業は、自社の社格や過去の成功体験、既存事業の規模感に引っ張られて、ここを間違えやすいです。
特に意思決定層ほど過去の成功体験や売上至上主義の観点から「広く獲りにいく発想」が強く、局地戦の設計が甘くなりがちです。
テーマ選定の本質は「一点集中できる核」を作ること
結局、新規事業のテーマ選定で最重要なのは、
一点集中できる強み(=自分が勝てる局地)を見つけ、それを核にすることです。
「どこに集中するか」が曖昧なままスタートすると、テーマは広がり、説明も散らかり、結果的に強者の土俵で戦うことになります。
逆に、局地が決まれば、やること(検証・開発・営業)が一気に絞れ、スピードも精度も上がります。
まとめ
・新規事業は「弱者の戦い」から始まる
・弱者は一点集中(局地戦)が基本
・大企業でも新規領域では弱者(ここを間違える会社が多い)
・だから「一点集中できる強み探し」がネタ出しの本質
新規事業を推進する立場の人は、一度「ランチェスター戦略」を学んでみると良いかもしれません。
私のセミナーや講演でも、このような話を織り交ぜています。興味があればお気軽にお声がけください。
「少し良い」は売れない:商品化への壁
新規事業創出のセミナーでは、よくこうお伝えしています。
「少し良い」程度の商品は、基本的に売れにくい。
だから新規事業としては厳しい。
なぜか。理由はシンプルで、スイッチングコスト(乗り換えのコスト)があるからです。
研究者が見がちな価値と、採用側が見ている価値は違う
研究者はどうしても「技術の価値そのもの」に目が向きがちです。
しかし採用側は、価値を “既存品との比較” で判断します。
たとえば、ある材料の性能が 1.2倍 になったとします。
技術としては確かに良い。でも採用側は次のような点までセットで考えます。
・置き換えたときにプロセス条件は変わらないか
・歩留まりや安定性は大丈夫か
・長期信頼性(寿命・劣化・再現性)は担保できるか
・供給・品質保証・規格対応は整っているか
・評価・認証・切替え試験にどれだけ工数がかかるか
つまり、採用側の脳内では「1.2倍の性能アップ」はこう翻訳されます。
「性能は上がるけど、評価と切替えが面倒。リスクも増える。その労力に見合うほどのメリットか?」
だから1.2倍程度の改善では「見送り」になりやすい。これは性能だけでなく、コストが20%下がった場合でも同じです。
切替えにかかる工数・リスク・評価費用を考えると、「20%安い」だけでは動かないことが多いのです。
スイッチングコストは、思っている以上に重い
既存のものからスイッチさせるには、意外とお金と時間がかかります。
結局のところ、一通り置き換えてみて、全部チェックしないといけないからです。
この「全部チェック」が曲者で、評価が長引けば長引くほど、現場の優先順位は下がり、担当者も変わり、立ち消えになりがちです。
「少し良い」ではなく「これでなければならない」が突破口
一方で、「少し良い」ではなく、「これでなければ解決できない」
というレベルの価値を提供できると、スイッチングコストを度外視してでも採用されやすくなります。
よくペインニーズと言いますが、これは単なる改善ではなく、
既存品では解決が難しかった“根本課題”を潰すタイプの価値です。
・不良が止まらない
・法規制・環境対応で現行品が使えなくなる
・信頼性が足りず市場クレームになる
・生産性がボトルネックになっている
・そもそも実現できない性能を実現する
こういう“痛み”を解決するものは強い。多少高くても、切替えが大変でも動きます。
新規テーマは「価値仮説を顧客検証で磨く工程」になりやすい
ただ、ペインニーズまで解決できる商品は、正直めったにありません。だから新規テーマは、最初から正解に辿り着くというより、
・仮説を立てる
・試作する
・顧客と話す
・ずれる
・直す
・もう一度試す
という地道な仮説検証の繰り返しになります。しかも面白いのは、最初は見えていなかったニーズが、途中で見つかることも多い点です。
そのため、できるだけ早くサンプルを作り、顧客と対話するのが望ましいです。
最近ではこれをラピッドプロトタイピングと言いますが、まさに新規事業にとって重要な行為になります。
研究開発した商品の「目指す売上」は、いくらが正解か?
コンサルティングでよく聞かれる質問があります。
「新規テーマって、売上いくら見込めたら成立しますか?」
結論から言うと、正しい答えはありません。
そして、最初から売上の“正解”を決めに行くほど、新規事業は外れやすくなります。
「100億円ないと意味がない」時代は、確かにあった
一昔前、大企業では
「新規事業は年商100億円規模が見えないとやる意味がない」
と言われていました。
例えば、銀塩写真で大きく儲けていた頃の富士フイルムのように、巨大な利益源がある時代では、売上の小さい事業は手間の割にメリットが薄い。
これは当時としては、合理的な判断でした。
でも今、最初から100億円が見える商品はほぼ無い
今の時代、最初から年商100億円が見える新規商品はほとんどありません。
市場は細分化され、ニーズも変化が速く、不確実性が高い。
つまり、
徹底調査
完璧な企画書
確実な実行
という一直線のやり方(図の左側)は、現実ではあまり機能しません。
私の答え:まず年商1億円で十分
質問への私の答えは、
「年商1億円あれば十分」
むしろ高いくらいだと思っています。
大切なのは金額そのものではなく、 市場は出してみないと分からない、だから小さく出して、早く確かめるという考え方です。
金額より「価値」を見る
売上議論がズレる原因は、「市場規模」や「金額」を先に見てしまうことです。
本当に重要なのは、 誰の困りごとをどれだけ強く解決できるか、他と何が決定的に違うか、価値が強ければ、市場は後から広がります。
価値が弱ければ、どれだけ調査しても売れません。
いま時代は「仮説→試作→評価→修正」
現実の新規事業は、多くがこの流れです。
ニーズと技術の仮説を立てる
サンプルを作る
市場で評価する
修正する(繰り返す)
商品化へ
会議で正しさを決めるのではなく、市場に聞いて決める。
この方が、結果的に早く確度も上がります。
売上目標は後からついてくる
まとめです。
今は最初から大きな売上を見通せる時代ではない 。「いくら売れるか」より「価値が強いか」を見る。最初は小さく検証し、修正しながら育てる。
新規事業は、完璧な企画書で当てに行くものではなく、仮説と試作で育てていくもの。
これが、現場で見てきた実感です。
徹底的に調査しても「新規事業」は生まれにくい
徹底的に調査しても「新規事業」は生まれにくい
「新規事業が出てこないのは、調査が足りないからだ」
コンサルティングの現場では、こうした前提に立った相談をよく受けます。
- 「調査のやり方を教えてください」
- 「調査する人のレベルが足りないんですよね」
- 「調査が足りていないので、効率よく調べる方法はありませんか?」
言葉としては穏やかですが、雰囲気としては「テーマがうまくいかないのは、調査が甘いからだ」という前提に立っていることがほとんどです。しかし私は、ここに大きな落とし穴があると感じています。
単なる調査をどれだけ積み重ねても、新規事業のネタはほとんど出てこない
仮に世界中の論文、特許、競合製品、市場レポートを徹底的に調べたとしても、そこから出てくるのはせいぜい、
- 既存技術の組み合わせ
- 他社の後追い
- 「どこかで見たことがある」アイデア
であることが大半です。もちろん、こうした情報から事業ネタにつながることもあります。ただしその場合、自社の独自性や差別性が弱いテーマになりがちです。これは「調査」が悪いのではありません。調査という行為の性質上、 “過去〜現在のデータの積み上げ”です。新規事業、とくに本当に意味のあるテーマは、データの積み上げだけでなく、そこにさらに 洞察や直感(≒センス) が加わって生まれることが圧倒的に多いのです。
新しいアイデアは「直感」から始まる
少し古い例ですが、ソニーのウォークマンは非常に象徴的です。
「音楽を聴きながら歩きたい」
この発想は、市場調査から導かれた答えではありません。当時アンケートを取れば、「音楽は家で聴くもの」という回答が大半だったはずです。
また iPod についても、「既存製品のUIがダメだから、自分が本当に欲しいものを作らせた」とスティーブ・ジョブズが語ったと言われています。
これらは、どんな調査をしても、どんなフレームワークを使ってもそのままの形では出てこない答えです。
調査は不要?
誤解してほしくないのは、「調査は不要だ」と言いたいわけではありません。
重要なのは 順番 です。
私が推奨しているのは、以下の流れです。
- まず、自社の強み・特徴・クセを徹底的に理解する
- 調査(ただし観点を絞る)
- その強みが「生きる場面/市場」がないか探す
- その強みを「伸びている市場」に転用できないか考える
- 古い技術でも、IT進化やデバイス進化と組み合わせて“復活”できないか検討する
- 調査で出てきた仮説を確認・修正する
このプロセスで重要なのは、②の調査で「世界中を徹底的に調べる」必要はない、ということです。
リソースは有限ですし、情報を集めるだけでは最後の一歩が出ません。
必要なのは、最後は結局、遂行する人の洞察と直感です。
直感や洞察は曖昧に見えますが、そこにはその人の経験知(暗黙知)が詰まっています。
コンサルティングの最初で行うこと
私が新規事業のコンサルティングで最初にお願いするのは、徹底的な「調査」ではありません。まずは 自社の技術的な強みの棚卸しと、伸びる市場の調査/分析です。
イノベーションは「新結合」です。
強み技術 × 伸びる市場 → 強みが生きる“伸びる市場”のテーマ
これは単に情報を集める作業というよりも、
「自社の強みが市場にどう導入され、どう価値になるか」
を具体的に想像しながら世界を見る作業に近いと思っています。
結論:テーマ選定で本当に大事なこと
テーマ選定の失敗は、「調査が足りなかったから」ではないことがほとんどです。
単なる調査では、新しいテーマは生まれません。重要なのは、自社の強みを理解すること、市場(特に伸びる市場)を認識すること、そして、洞察と直感で“結合”させることです。
調査は答えを出すためではなく、仮説を磨くために使う。
ここを押さえるだけで、テーマ選定は大きく変わります。
是非!

