日々の気づき
シリコンバレー流で新規事業に勝つ
本屋さんに行くと、「スタンフォード流の***」や「シリコンバレー流**」といった書籍を見かけますよね。シリコンバレーって本当に凄いのかと思いますよね。
私は、以前MEMSデバイス/技術の移管のためにシリコンバレーの企業に勤めたことがあります。その経験から感じたのは、日本式の研究開発や技術開発が劣っているわけではないということです。むしろ、優れていると感じました。しかし、圧倒的に劣っていると感じたこともありました。それは、目的に向かって進む決断力や新しいことに挑戦する気持ちです。これは日本人のメンタリティの問題かもしれませんが、圧倒的に劣っていると感じました。
新規事業や研究開発の成果は以下のような関係があると考えています。
(技術力)×(挑戦する気持ち)×(早い判断)→(成果)
個人的な印象ですが、日本の企業は挑戦する気持ちが少なく、挑戦する前からリスクを評価してネガティブな要素を強調し(市場が小さい、他者が既にやっている、昔に失敗した経験など)、進めない傾向があります。また、その判断や決断も遅いように感じます。
新しいことにはもちろんリスクが伴いますが、悩んでいる間にできるだけ簡単に試してみるべきだと思います。これがシリコンバレーの優れている点だと感じました。
講演会資料より
新規事業のテーマは時流に乗る
「時流に乗ることの重要性」
新規事業のコンサルティングでは、よく「どのような市場に参入すべきか?」という質問を受けます。
正しい答えは存在しませんが、時流に乗ることが重要だと答えています。つまり、将来的に成長が見込まれる市場に参入することで、市場の成長に合わせて自社も成長することが期待できます。さらに努力を重ねることで、市場の成長を上回る成長も可能です(エレベーターを駆け上がる)。
また、成長している市場は競争がまだ激しくない場合が多く、参入後の市場獲得の可能性が高まります。新たな市場に参入することで、既存のプレーヤーよりも優位な位置を築き、顧客を獲得しやすくなります。競争が少ない段階で市場に参入することで、ブランドの確立や顧客ロイヤルティの構築にも有利です。
一方で、縮小している市場(下りのエスカレーター)に参入すると、努力しても利益を確保することが難しくなります。市場縮小の要因を逆転させることは困難であり、持続的な成長を見込むことも難しいです。
新規事業は、できる限り時流に乗り、将来的に成長が見込まれる市場を探すことが重要です。そのためには、常に市場の変化を見極める必要があります。市場調査やトレンド分析などの手法を活用し、成長が期待される市場を見つけ出すことが求められます。そして、自社の技術やリソースを活かし、その市場において独自性や付加価値を提供することが成功の鍵となります。
なぜ既存事業は衰退するのか?
なぜ既存事業が衰退していくのか?
既存事業に力を入れて頑張っています。利益を上げるために、シェアを拡大するために日々努力している方がほとんどだと思います。しかし、気づいたら競争が激しくなり、シェアが減少しています。さらには全く新しいビジネスに取って代わられています。そんなことはないでしょうか?
私が体験した(横で見ていた)例を挙げます。それは2000年頃から始まったコンパクトデジカメの開発競争です。当時は数十万画素のカメラが一般的でした。研究者や開発者は、100万画素目標、200万画素目標と、年々画質を向上させながら、機能を改善し、コストを削減し続けていました。市場での競争は激化し、疲弊が始まった頃にスマートフォンが登場しました。スマートフォンの登場によって、コンパクトデジカメはほぼ売れなくなり、撤退する企業も増えました。また、銀塩写真からデジカメへの移行は大きなイノベーションでしたね。
ざっくりまとめると、次のような流れです。
- 真面目に開発する。
- 一時的には利益を上げる。
- 競争が激化する。
- より一層努力する。
- 別の技術が出現する。
- 衰退する。
「イノベーションのジレンマ」とも呼ばれるこの現象は、国内の多くの既存事業にも当てはまるのではないでしょうか? 自社が取り扱っている商品に対しても安心感を持っていても、予期せぬ方向から新しい商品が登場する可能性もあります。この傾向はデジタル化の影響で加速しているように感じます。
対策としては、常に新規事業を生み出す努力を続ける必要があると思います。一緒に新規事業を考えてみませんか。
今後のMEMS市場は?
EETimesの記事によると今後とも伸びていきそうです。
記事内の図より
「MEMSデバイスは、高周波デバイスなどの他、プリンターのインクジェットノズルや自動車のエアバッグ、スマートフォンやゲーム機などに用いる加速度センサーなど、その用途は幅広い。このため、今後の市場予測においても、2020年から2025年までのCAGR(年平均成長率)は10.2%となり、2025年には2兆360億円の規模に拡大すると予測した。このうち、国内市場は2620億円と見ている。」
市場としては、自動車分野(自動運転、安全性、ドライバ支援、電気自動車関連)、医療分野(センシング、監視、みまもり、診断アシスト)など、電子製品(スマホへの新価値、ウエアラブル等)、製造業(センシング、制御、監視)、航空宇宙(センシング、高度な制御等)への需要が伸びていくと思われます。私の専門分野の圧電MEMSも用途はたくさんあるためまだまだ伸びると考えています。
ただし大手メーカーがかなりの部分を抑えていますから、これから参入しようとする企業さんは、用途へのカスタマイズと機能による差別化が必要になると思います。
汎用的なMEMS大手メーカーに任せて、これから参入する企業、中堅規模の企業はカスタマイズして性能を特化させることで、市場が開けると考えます。
市場調査とどこを目指すかというのは、新規事業の考え方そのものです。どう特化させて、どこの市場を狙うかはしっかり考える必要がありそうです。
伸びる市場に強みのあるデバイスを開発して市場投入して、さらに伸ばして行きたいですね。
個別のデバイスの設計、プロセスのアドバイス、試作のサポートもやっております。それぞれ失敗しないための勘所があります。気軽にご相談ください。
イノベーションにて新事業を作るシンプルなやり方
最近では、イノベーションという言葉を様々な場面で聞くようになりました。多くの人がイノベーションについて語っていますが、この言葉の定義としては、シュンペーター氏が最初に提唱した「経済活動の中で、生産手段や資源、労働力などを、それまでとは異なる方法で新たな形態に結合すること」があります。
簡単に言うと、イノベーションとは「新しい結合」のことであり、既存の資源や技術を組み合わせて新しい製品やサービスを生み出すことです。この手法は、新規事業の創出に有効であり、既存のものを組み合わせることで新たな価値を生み出すことができます。
イノベーション≒新結合
具体的な例を挙げると、消しゴム付き鉛筆(消しゴムと鉛筆の組み合わせ)、インターネットと音楽(ストリーミングによる音楽配信)、回転寿司(お寿司とコンベアによる利便性)、ナビゲーション(地図とコンピューター・GPS)などが挙げられます。スマホは、複数の機能が組み合わさった非常に便利なものであると言えます。
また、新規事業においても、富士フイルムの例のように、銀塩写真技術を利用して化粧品ビジネスに進出するなど、既存の技術を異なるビジネス分野に適応することも新しい結合の一つであります。このような新しい結合の考え方は、新規事業の創出において有用であると考えられます。
コンサルティングの現場では、強みと伸びる市場を組み合わせて新しいビジネスを考えることが一般的です。ぜひ、新しい結合を意識して、新規事業を考えてみてください。