日々の気づき/ブログ

2026-10-31 20:47:00

研究開発テーマが生まれない会社の共通点  ~アイデア不足ではなく、仕組みの問題~

「新しい研究開発テーマを考えてほしい」
研究開発部門ではよく聞く言葉です。しかし、なかなか新しいテーマが出てこない。出てきても既存製品の改良や、現在の技術の延長線上にあるものばかり。
これは研究者の発想力や能力の問題なのでしょうか?
私は必ずしもそうではないと思っています。むしろ、新しい研究開発テーマが生まれにくい組織になっていることが問題ではないでしょうか。

1.なぜ新しいテーマが生まれないのか?
いくつかの共通点があるように思います。
① 目の前の仕事で忙しすぎる
② 既存事業の延長でしか考えられない
③ 新規テーマなのに既存事業と同じ基準で評価する
などです。

私は特に③が大きな問題だと思っています。
①は業務量や人員配置の問題です。②は発想法を学び、異分野や市場を見る訓練をすることで、ある程度は改善できます。
しかし、③は研究者個人の努力ではなかなか解決できません。
「市場規模は?」「売上はいつ立つのか?」「本当に顧客はいるのか?」上司や経営層から、このような質問をされることがあります。
もちろん、会社経営の視点ではどれも重要な質問です。しかし、まだアイデア段階のテーマに、既存事業と同じような確実性を要求してしまいます。
新規事業がすべて予想通りに進むのであれば、とっくに大きなビジネスがいくつも立ち上がっているはずですよね?
そもそも、新規事業は不確実なものです。にもかかわらず、最初から確実な市場や売上を求めてしまうと、不確実性の高いテーマは早い段階で消えてしまいます。
そして、結果として残るのは既存事業の延長にある無難なテーマばかり。新しいテーマを出せと言いながら、新しいテーマが通らない評価の仕組みになっているのです。

2.新規テーマは成長段階に応じて評価する
では、どうすればよいのでしょうか?
私は、テーマの成長段階に応じて評価基準を変えることが重要だと考えています。新規テーマだからといって、評価を甘くするという話ではないと思います。
最初から完成度の高い事業計画を求めるのではなく、その段階で何が分かっていて、何が分かっていないのかを確認することが大切です。
一般的には、ステージゲートという考え方があります。開発のフェーズごとに評価項目を設定し、次の段階に進めるかどうかを判断する仕組みです。各社基準があるようです。私もコンサルティングでは一定の基準でお話しすることが多いです。でも、商品化までフェーズで分割して抜け漏れのないような構成になっています。 

例えば、初期のアイデア段階であれば、
・想定する顧客は誰なのか?
・どのような課題やニーズがあるのか?
・自社技術の強みを活用できるのか?
・市場の規模感はどうか?

まずは、この程度から始めてもよいと思います。
この段階では、仮説が含まれていて当然です。大切なのは、その仮説に検証する価値があるかどうかです。そして、次の段階では顧客へのヒアリングや技術検証を進め、市場性や技術的な実現可能性を確認していきます。
さらに開発投資が大きくなる段階では、市場規模、競争優位性、収益性などをより厳しく評価する。つまり、最初から答えを求めるのではなく、段階的に不確実性を減らしていくのです。

もう一つ重要なのは、上司や経営層の役割です。
アイデア段階で「本当に売れるのか?」と問い詰めるよりも、「それを確かめるために、次に何をすればよいのか?」と問いかける。そして、足りないところは積極的にサポートを行う。その検証に必要な時間と、少額でも予算を与える。もちろん、検証の結果、可能性が低いと判断すれば撤退すればよいのです。その際はステージゲートの項目にのっとって進めれば担当者も納得します。重要なのは、不確実だから却下するのではなく、不確実性を減らすための検証機会を与えることだと思います。 

3.まとめ
「新しいテーマを出せ」と言いながら、出てきたテーマを潰していないでしょうか?
新規事業には不確実性がつきものです。その不確実性を最初から排除しようとすれば、これまでにない新しいテーマほど採用されにくくなります。もちろん、すべてのアイデアを育てる必要はありません。見込みのないテーマは早めに撤退することも重要です。
ただし、その判断はテーマの成長段階に応じた評価で行うべきではないでしょうか。
新しいテーマを生み出すには、研究者の発想力だけでなく、未完成のアイデアを評価し、検証しながら育てるマネジメントが重要だと思います。

一緒に新しいテーマを考えてみませんか? 会社に適したステージゲートの項目も考えながら進めるとよいいいと思っています!

新規事業の芽.jpg

2026-10-13 12:27:00

新規事業の提案書には「途中下車戦略」を入れよう

大企業で新規事業を提案すると、昔は偉い人から「100億円のビジネスになるのか?」と聞かれていました。
今はさすがに100億円のビジネスを一発で立ち上げるのは不可能だと認知されてきていますが、やっぱり数十億円のビジネスを描かなければ認めてもらいにくいと思います。

会社として大きな事業を期待する気持ちはわかります。でも、技術開発も顧客開拓もこれから手を付けるという段階で、いきなり100億円の事業をつくるのは不可能に近いと思います。とはいえ、「そんなの無理です」で終わらせてしまうと、話は先に進みません。
そこで提案書に入れたいのが、私が「途中下車戦略」と呼んでいる考え方です。

10年以上先の目標として、100億円を掲げるのはよいと思います。ただし、そこに必要な技術を最初からすべて開発しようとすると、投資が大きくなり、売上が立つまでの時間も長くなります。その手前に、今ある技術に少しの開発を加えれば参入できる市場はないでしょうか。要求性能を満たしやすい用途や、顧客への接点をつくりやすい市場から始めるのです。

例えば、最終目標に技術A・B・Cが必要なら、まずは技術Aで価値を提供できる用途を探す。そこで事業化し、顧客の反応を確かめ、技術を磨く。その実績を使って技術Bを追加し、さらに技術Cを加えて、大きな市場へ進みます。
途中の事業で得られるのは、売上だけではありません。実際に使われたデータ、品質や製造のノウハウ、顧客との信頼も残ります。収益が出れば、次の開発投資の一部を支えることもできます。ただし、小さな事業を始めれば何でもよいわけではありません。最終目標につながらない個別対応に追われて、次へ進めなくなる可能性もあります。

だから提案書には、「途中の事業で何を得て、次の市場でどう使うか」まで書くことが大切です。技術の達成度、顧客の反応、採算など、次の投資を判断する条件も示しておきたいところです。「将来は100億円を目指します。そのために、まずこの顧客に、この技術で価値を届けます。そこで得た技術・顧客・収益を、次の段階につなげます」こうした提案なら、大きな期待を、今日から動ける計画に変えられます。

新規事業の提案書には、遠い終点だけでなく、途中で事業が成立する駅も書く。途中下車しながら、最終目標を目指す道筋を示してみてはどうでしょうか。


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2026-09-07 17:31:00

【研究開発の失敗例】技術は完成したのに市場に参入できなかった「タッチパネル開発」の教訓

【研究開発の失敗例】技術は完成したのに市場に参入できなかった「タッチパネル開発」の教訓

ネット上やセミナーでは成功事例が多く出てますが、失敗事例はなかなか表に出てきません。
自身の失敗事例を少し曖昧にしてお話します。
個々の失敗経験を抽象化・普遍化することで、テーマ選びや事業化を成功に導くための共通の教訓が見えてくると思います。

「技術目標は達成したにもかかわらず事業化できなかった」という2000年頃の私自身が携わったタッチパネル開発の事例とその教訓をご紹介します。  
2000年頃、自社の強みを活かしたPDA(携帯情報端末)向けの独自方式タッチパネルを開発しました。約2年でプロトタイプが完成し、性能面の目標を満たすなど技術的には高い成果を得たものの、商品化されることなくプロジェクトは中止されました。  


なぜ市場参入できなかったのか?

技術は完成したのに事業化できなかった主な要因は以下の3点です。 

・初期のマーケティング不足:「良いものを作れば売れる」という思い込みがあり、試作品を評価してくれる「仮の顧客」を確保していませんでした。  
・市場を狭く捉えすぎた:当時のPDA市場しか見ておらず、「画面に触れて操作する」という機能が持つ大きな可能性と変化に気づけませんでした。皆さん御存知の通り、タッチパネルはその後色んなものに入って大ブレークしました。  
・事業部門との連携の遅れ:試作品完成後に事業部門へ相談したため、事業部門としても判断が難しく、量産や販売へ主体的に動くことができませんでした。 事業部はタッチパネルに対して売ったこともなく、理解度が全くありませんでした。 


失敗から得た教訓とその後

この痛い経験から、新技術の開発では「技術者自身が初期からマーケティングに関わり、仮の顧客と対話すること」、そして「特定の製品に固執せず、早期に事業部門を巻き込むこと」が不可欠だと学びました。  
最初の開発は商品化に至りませんでしたが、この失敗は決して無駄ではありませんでした。
そこで蓄積された技術知識や市場への認識は失われず、約10年後のAgメッシュ型のタッチパネルへの参入と成功を支える土台となりました。  

失敗は研究開発の終わりではありません。そこから何を学び、修正していくかが重要です。
得られた技術や知識は、次のテーマを生み出すための貴重な資産になります。
失敗を恐れず小さく試して学ぶ姿勢が、新しい事業を生み出す力になると思います。

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2026-08-18 16:15:00

セミナーのご紹介 【即実践できる】 自社技術の「新規事業ネタ」の見つけ方 ~特許×AIで新規事業テーマを創出する実践手法~ 【ライブ配信】 2026年9月25日(金) 13:00~16:30

今回のセミナーではAIを使った新規事業創出のやり方も公開します!

【即実践できる】
自社技術の「新規事業ネタ」の見つけ方
~特許×AIで新規事業テーマを創出する実践手法~

【ライブ配信】 2026年9月25日(金)  13:00~16:30

https://www.science-t.com/seminar/K260925.html

時代の変化が加速する中、技術者・研究者には「次に何を開発すべきか」、「自社技術をどの市場へ展開すべきか」が常に問われています。しかし、新規事業のネタ出しは個人のセンスだけに頼る必要はありません。
本セミナーでは、既存事業が停滞する理由とMOT(技術経営)の基本を整理したうえで、講師が富士フイルム時代に培った経験をもとに、
自社技術の「強み」を棚卸しし、成長市場と結びつける論理的な「出口探索」の進め方を解説します。さらに、特許情報を「未充足ニーズと解決策」の情報源としてAIで効率的に読み解き、フォアキャスト、バックキャスト、バリューチェーン分析を組み合わせて、技術起点の新規事業テーマの骨格をつくる実践的な手法を学びます。

2026-07-30 22:41:00

MOT(技術経営)とは?〜優れた技術がビジネスで選ばれない理由〜

「技術開発には成功したのに、事業としては失敗した…」
技術者や研究者の方なら、一度はそんな苦い経験や葛藤があるのではないでしょうか。
技術を単なる研究成果で終わらせず、ビジネスの価値に変えていく考え方「MOT(技術経営)」についてお話しします。

■ MOT(技術経営)とは?
MOTとは、技術を効果的に活用して経営を行うことです。 技術そのものを深めるだけでなく、市場、顧客、知財、事業戦略と結びつけ、「企業価値」や「社会的価値」へつなげていくための思考法ですね。

■ 技術が優れているだけではダメ
研究現場にいると、どうしても「より高性能に」「より低コストに」と技術そのものに目が向きがちです。
自分が得意な分野ですし、活躍の場ですからね。
ですがビジネスでは、どれほど画期的な技術でも「顧客の課題を解決していなければ」採用されません。量産性やコストが合わなければ市場にも入れない。「こんな素晴らしい技術なんだから採用しろ!」と言っても選ばれないのは当然なんですね。

「良いものを作れば売れる時代」は終わりました。
技術を深めるのと同時に「その技術をどこで使えば価値になるのか?」をセットで考える必要があります。

■ 事業を成功に導く「問い」
開発を進める際は、常にこんな問いを持つことが大切です。

その技術は、誰のどの課題を解決するのか?
顧客はお金を払ってでも解決したいのか?
既存技術と比べて、なぜ選ばれるのか?
自社が勝てる理由(知財・コスト等)はあるか?

ここを曖昧にしたままだと、「性能は出たが顧客がいなかった」「特許は取れたが出口がない」といった失敗に陥りがちです。
MOTとは、技術と事業戦略をしっかり接続するための視点なのです。

■ MOTは学びやすい時代へ
私が学び始めた当時は「MOT」という言葉も一般的ではなく、「技術者向けマーケティング」といった雰囲気でした。
いろんな方の講演を聞き、関連本を読み漁って独学で身につけたものです。

しかし、今は専門書も充実していて、本当に学びやすくなったなと感じます。
いい本がたくさんありますから、書籍を探してみてください!

■ 研修・セミナーのご案内
当事務所では、MOTの初歩的な講演と、自社の強みを活かした新規事業の「ネタ出し」をセットにした研修を行っています。
「研究成果を事業につなげたい」「新規事業のアイデア出しで苦戦している」という企業様は、ぜひお気軽にご相談ください!

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