日々の気づき/ブログ
知財(特許)をマーケティング/新規事業創出に利用する その5 新規事業を生み出す特許検索
新規事業を生み出す特許検索
新規事業を生み出すためのイノベーションの公式
イノベーションとは新結合です。新結合は、何かと何かを結合させることです。特許検索で次の項目を結合させることで、新規事業のネタが生まれます。
イノベーション ≒ 新結合
(内部環境)✕(外部環境)= 新規事業ネタ
内部環境とは自社の強みや保有技術です。外部環境とは社会潮流やこれから伸びる市場のことです。
結合させるべき第一のキーワードは「強み技術や保有技術」です。次に、バックキャスティングで未来に必要なモノを考えること、時流に乗り市場が伸びる業界やテーマの「市場や商品」です。そしてそれらを特許検索にて掛け合わせます。
そうすると、保有技術を使った商品の特許が出てきます。
以前述べたように、特許は国内だけで年間30万件、過去のものを含めると1000万件以上のデータベースになっています。その中には、保有技術を使った商品の他社特許があるはずです。出てきた特許を読み込み、自社技術を使った際に特徴があるか、メリットが出るかなどを考えて新規事業のテーマになるかどうかを判断します。
具体的なステップ
1.特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
2.ターゲットとする分野/領域を抽出(バックキャスティング法も参考にしてください)
3.キーワードを掛け合わせて、特許の検索と読み込み
4.新規事業テーマの選定とシナリオ作成
次回に事例を上げてみます。
知財(特許)をマーケティング/新規事業創出に利用する その4 未来を予測して競争力を高める
今回は、特許分析を通じて将来の商品開発を先取りする方法について解説します。
1. 特許に着目する理由とは
2. 事例:Appleの顔認証技術
1. 特許に着目する理由とは
特許は新しい技術やアイデアを保護するために申請されますが、その内容は同時に公開されます。要するに、特許を読むことで、将来どのような商品が開発される可能性があるかが見えてきます。しかし、特許は専門的な用語や図表で記載されているため、一般の方にとっては理解が難しいことがあります。したがって、特許分析のスキルを身につけることで、競合他社や市場動向に先んじて、自社の商品開発に役立てることができるのです。具体的には、最新の特許を解読することで未来の技術動向を予測できます。
2. 事例:Appleの顔認証技術
事例として、Appleの顔認証技術に関する特許を見てみましょう。これは筆者の独自の見解であることをご理解ください。
この特許は2009年に公開され、商品化は2017年に実現しました。その間、研究開発が行われていました(下図)。携帯電話メーカーであれば、Appleの特許に依存せず、競合力を維持するための技術を開発することも考えられるでしょう。しかし、他の企業にとっては、顔認証技術がスマートフォンに組み込まれることを前提に、新しいサービスや技術の開発を検討する重要な機会と言えます。
この特許を読んだ企業は、以下のような問いかけを行うかもしれません。
顔認証技術がスマートフォンに組み込まれた場合、社会はどのように変わるか?
顔認証を活用した便益のあるサービスは何か?
これらの要素を組み合わせて新しいプロダクトやサービスを提供できないだろうか?
このような視点から、自社の商品企画を練ることができます。そして、商品が市場に導入される際には、他社に比べて圧倒的な競争優位性を持つことでしょう。このように特許を読むことで、新しいビジネスのアイデアを発見することが可能です。未来を予測するというのはワクワクしますよ!
知財(特許)をマーケティング/新規事業創出に利用する その3 ライバル会社の調査と新規事業
ライバル会社の調査と新規事業
知財(特許)を新規事業のテーマ出しに利用することができます。簡単な方法は、ライバル会社や同様の事業を行っている会社の知財を調べることです。知財を調べる前に、対象となる会社の商品群をHPで確認するのも有効です。
要は、
・同じような強みを持つ企業はどんな商品を開発しているのか?
・将来像をどう考えているのか?
ということを調べていきます。特に特許は開発中の商品でも出願されるため、数年後の商品をある程度予測することができます。
わかりやすい例として、コロナ禍でマスクで有名になった「不織布」を考えてみましょう。
自社が不織布を扱っている企業だったとします。ライバル企業はどんな商品を出しているでしょうか?ライバル企業の特許群を検索してみると、さまざまなことが分かると思います。
特許情報プラットフォームの特許・実用新案の検索ページで検索を行います。
特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go
で、検索項目を「出願人/権利者/著者所属」に変更し、ライバル企業の名前をキーワードに入力します。検索結果が膨大な場合は、全文や請求の範囲などの項目を選んで「不織布」と入力して絞り込みます。
例えば、ライバル企業として私の前職の「富士フイルム」を例に、「不織布(全文)」を入力してみます。富士フイルムは不織布がメインの会社ではありませんが、国内だけで2400件以上がヒットしました。「不織布」を請求の範囲のみに限定すると、国内で125件がヒットしました。この数なら斜め読みでも対応可能です。
最近の出願を確認すると(詳細までは見ていませんので、ご了承ください)、
・集塵フィルタ
・インクジェット
・コピー機
・建築用防水シート
・細胞分離フィルター
等々に利用されていることがわかります。
もし、自社がこのような応用商品を持っていなかったら、これらの特許を参考に自社の新規事業の参考にできるのではないでしょうか?自社の不織布の特徴が活きる商品になると思います。自社の商品のライバル会社の特許を調べて、ライバルの出願状況をベンチマークする、さらには最近の特許を調べることでライバルの将来の商品が予想できるということです。
以上のように、他社の特許を調べて自社の商品開発や新規事業に利用するのは有効な方法です。ぜひともトライしてみてください。
次回も特許を使った新規事業について書いていきます。
知財(特許)をマーケティング/新規事業創出に利用する その2 営業への利用
営業に利用
知財(特許)を営業に利用する方法はいくつかありますが、まずは一番簡単なことを説明します。ただしこの方法は相手が技術系に限ります。
ずばり、会う方の名前を特許検索します
検索するサイトは製造業の企業さんだと独自の有料サイトを契約している場合が多いと思いますが、無料版もあります。
それが、こちらの特許情報プラットフォームというものです。
特許情報プラットフォーム
ここのページにやり方も記載されていますね
出願人/発明者から検索
名前の入力は少し特殊で図のように入れないと漏れがあるそうです。また同姓同名がいると困るので、出願人/権利者(一般的には会社になります)に所属の会社名を入れて同姓同名を避けます。同じ会社に同姓同名がいた場合は難しいですね。そうすると、検索結果に特許が複数出てきます。特許を出していない人だと残念ながら出てきません。
私の場合は圧電関係の特許がたくさん出てきます。さらには振動発電とかもありますから、会ったときにその話題をそれとなく出すことで話が盛り上がります。会う相手の技術背景がわかるので、営業もやりやすくなると思います。
さらに、売り込みたい商品について関連特許を出願している人のところに行けば成功の確率が上がるかもしれませんし、様々な情報が得られるかもしれません。
実際にこの方法を私は使っていましたし、ある会社さんの営業も使っています。ちょっとしたことなのですが、切り口として技術の話題ができるので、話が弾みやすいです。
使ったことがない方はぜひ試してみてください。
次回は上級編を記載したいと思います。
知財(特許)をマーケティング/新規事業創出に利用する その1
特許を調べたことはありますか?
大きな企業で働く技術者であれば、自分で特許を書いた経験がある方も多いでしょう。
国内で年間にどれくらいの特許が出願されているかご存知ですか?
以下のデータは、特許庁から取得したものです。
毎年約30万件の特許が出願されており、これらのデータは20年以上にわたって蓄積された検索可能なデータベースにあります。最も古い記録は昭和後半から参照可能です。海外のデータを含めると、その数はさらに膨大になります。
特許の内容を大まかに説明すると、以下のようになります。
ここで特に注目してほしいのは、発明の概要、特に解決しようとする課題、手段、効果の部分です。他社の特許を調べることで、その企業が直面している
・課題:問題点(他社のニーズ)
・手段:解決策(他社の考えやコンセプト、ノウハウなどが明らかになります)
・効果:その成果や応用先(他社がどのような製品を目指しているかが推測できます)
といった情報が見えてきます。
これらを熟読し、自社に適用することが望ましいです。
なお、特許の公的な検索サイトがこちらにあります:https://www.j-platpat.inpit.go
次回以降、さらに詳しい説明を加えていきます。