日々の気づき/ブログ
クロスSWOTのやり方:町のラーメン屋で「4象限の戦略」を作ってみた
【実践編】クロスSWOTのやり方:町のラーメン屋で「4象限の戦略」を作ってみた
(前回:「意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)」の続き)
前回は、SWOT分析は「整理」ではなく、クロスSWOT(クロス分析)で戦略立案に落とす道具だ、という話をしました。SO/WO/ST/WTの4象限まで決めた瞬間に、SWOTは化けます。
今回は続きとして、クロスSWOTの具体的なやり方を、超ベーシックな事例で説明します。
題材は「町のラーメン屋」。生々しい技術の話より、こちらの方がイメージしやすい思います。でも、これが意外と本質を突きます。
1. まずSWOT分析を作る(盛らない)
町のラーメン屋(個人店)を想定します。
S(強み):味に定評がある/常連客が多
W(弱み):店主1人で回している/営業時間が短い
O(機会):デリバリー需要増/SNS拡散
T(脅威):大手チェーンの出店/原材料高騰
ポイントは、正直に盛らずに置くことです。
今回は“ありきたりな情報”ですが、実際にやるときは現状をしっかり分析して入れてください。ここで格好をつけると、後段の戦略が全部ズレます。
2. 次にクロスSWOT:4象限に「戦略」を置く(まずは雑でいい)
クロスSWOTの良いところは、会議が「だからどうする?」に進むことです。
まずは各象限に、施策(戦略)を考えます。
SO(強み×機会):攻める(成長戦略)
味の定評 × SNS拡散 → 看板メニューを“ストーリー化”して発信
常連が多い × デリバリー需要 → 常連向けの持ち帰り導線を作る
ST(強み×脅威):守りながら差別化(防衛戦略)
味の定評 × 大手出店 → 大手と同じ土俵で戦わず“専門特化”する
常連が多い × 価格競争 → 常連向けの限定メニューで囲い込む
WO(弱み×機会):補完・改革(変革戦略)
1人運営 × デリバリー需要 → メニューを絞ってオペを簡略化
営業時間が短い × SNS拡散 → 営業時間外でも売れる形(予約/冷凍など)を検討
WT(弱み×脅威):縮小・撤退(撤退戦略)
1人運営 × 原材料高騰 → 原価の高いメニューを整理し看板に集中
営業時間が短い × 大手出店 → 無理な多店舗展開はしない(固定費増は致命傷)
これによりSWOTを“並べた”だけでは見えない、攻め/守り/改革/撤退が見えるようになります。
3. ここからが本番:戦略(=意思決定)を決める3つの問い
クロスSWOTは、最後に**戦略を選ぶ(意思決定する)ために使います。
私がよく使う問いはこの3つです。
最も効くSOはどれ?(効果が大きいのは何か)
最も危険なWTはどれ?(放置すると致命傷か)
WOを1つだけやるなら?(弱みのボトルネックは何か)
例えばこのラーメン屋なら、
今月のSO:看板メニューのストーリー発信(SNS)
最優先WT:原材料高騰への対応(メニュー整理/価格設計)
最重要WO:1人運営の限界 → メニュー絞り込みで回す
…のように決められます。
4. 正解は1つじゃない。でも戦略は決められる
もちろん、ラーメン屋の戦略に唯一の正解はありません。
ただし、クロスSWOTの目的は「正解探し」ではなく、戦略を考える=意思決定することです。
まとめ:SWOT分析は“並べる”から“戦略に落とす”へ
今回は実践編として、町のラーメン屋の事例でクロスSWOT(SO/WO/ST/WT)の4象限戦略を作ってみました。次にSWOT分析をやるなら、まずは4象限に「戦略」を置くところから始めてみてください。
いろんな分野に適用できるのでいろいろとやってみてください。
新規事業創出の研修/現場では各自が持ちよった新規テーマネタに関して、このような取り組みを喧々諤々とみんなで議論して進めています。
意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)
意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)
― 研究開発と経営戦略の方向性を同時に決める道具 ―
SWOT分析は古い。昔からよくありますからね。
でも、本当に使いこなせていますか?形だけやって終わっていませんか?
強み・弱み・機会・脅威を書き並べただけでは、経営の意思決定はできません。
SWOT分析の本質は「整理」ではなく、経営戦略や研究開発戦略の方向性を決めるための掛け算です。
つまり、クロスSWOT(クロス分析)が重要になります。
戦略は掛け算でしか決まらない(クロスSWOT)
重要なのは4つのクロスです。
・SO(強み×機会):攻める(成長戦略)
・WO(弱み×機会):補完・改革する(変革戦略)
・ST(強み×脅威):守りながら差別化する(防衛戦略)
・WT(弱み×脅威):縮小・撤退する(撤退戦略)
経営判断とは、結局のところ「このどれを選ぶか」を決めることです。
研究テーマの方向性も同じ(研究開発戦略にSWOTを使う)
研究所でよくある議論は、
「この技術は面白い」
「世界初だ」
で止まります。
しかし、経営視点で問うべきは次の3点です。
・その技術は、どの機会(市場・規制・顧客課題)と掛け算になるのか
・どの脅威(競合・価格下落・代替技術)に対する武器になるのか
・弱み(量産性・コスト・販売力・信頼性)と組み合わさって失速しないか
ここから「だからどうする?」「何に注力する?」「何は捨てる?」という、研究テーマの選定・優先順位付けに落とせます。
例えば、
・独自材料技術 × 環境規制強化
→ SO:攻めの研究テーマ(用途開拓・先行投資)
・高性能だが高コスト × 価格競争激化
→ WT:やらない判断(撤退・縮小・別市場へ)
ここまで整理すると、研究テーマの優先順位が変わります。
さらに言えば、SWOT分析は単なる研究整理ツールではなく、事業ポートフォリオの整理(伸ばす/立て直す/守る/やめる)にも使えます。
SWOT分析で会議/経営の質が変わる(意思決定に効く)
よくある会議は、強みの話で終わる、市場の話で終わる、技術自慢で終わる、ということが多くないですか?
クロスSWOTをすると、「では、攻めるのか、守るのか、やめるのか?」まで踏み込めます。
戦略の選択肢が可視化され、経営会議で意思決定がしやすくなります。
SWOTが古いのではなく、浅いだけ
SWOT分析が使えないのではありません。
掛け算までやって、経営戦略・研究開発戦略に落とし込めていないだけです。
研究の方向性、事業の方向性、撤退判断。
それらを同時に整理できるシンプルな道具は、実は多くありません。
SWOTは、本気で使えば今でも十分に戦略を生みます。
意外と、使えます。
次に経営会議でSWOTをやるなら、「クロスSWOTで4象限の戦略(SO/WO/ST/WT)まで決める」と決意してください。
“整理”ではなく“意思決定”の道具になった瞬間、SWOT分析は化けます。
ぜひ使ってみてください!
新規事業は局地戦 ~ランチェスター戦略で考える~
新規事業は局地戦~ランチェスター戦略で考える~
新規事業でいちばん大事なのは、最初から「局地戦」だと割り切ることです。
ここを外すと、どれだけ良い技術や良いアイデアがあっても、競合の土俵で消耗して負けてしまいます。
特に大企業ほど、新規事業を「広域戦」で考えて失敗しがちです。既存事業の感覚のまま「市場を広く取りに行こう」「用途を広げよう」としてしまうからです。
局地戦・広域戦とは何か(ランチェスター戦略の発想)
局地戦・広域戦は、ランチェスター戦略の考え方です。
ビジネスを戦いに例えると、次のように整理できます。
・局地戦:一点集中で「勝てる場所」だけで戦う
(顧客・用途・条件・地域・チャネルなどを絞る)
・広域戦:広い市場で総合力勝負をする
(ブランド、資金、販路、人員が揃った“強者向け”)
違いはシンプルで、弱者は局地戦、強者は広域戦です。これがランチェスター戦略です。
新規事業は「大企業でも弱者」になる
ここで重要なのは、新規事業は大企業がやっても弱者になるという点です。
新規領域では、予算・人・実績・顧客接点が限られます。社内でも優先順位が上がりにくく、意思決定も遅れがちです。つまり、既存事業で持っている「強さ」は、新規領域にはそのまま持ち込めません。
だから新規事業は、会社規模に関係なく 「弱者の戦い方=一点集中」 が基本になります。
一方で大企業は、自社の社格や過去の成功体験、既存事業の規模感に引っ張られて、ここを間違えやすいです。
特に意思決定層ほど過去の成功体験や売上至上主義の観点から「広く獲りにいく発想」が強く、局地戦の設計が甘くなりがちです。
テーマ選定の本質は「一点集中できる核」を作ること
結局、新規事業のテーマ選定で最重要なのは、
一点集中できる強み(=自分が勝てる局地)を見つけ、それを核にすることです。
「どこに集中するか」が曖昧なままスタートすると、テーマは広がり、説明も散らかり、結果的に強者の土俵で戦うことになります。
逆に、局地が決まれば、やること(検証・開発・営業)が一気に絞れ、スピードも精度も上がります。
まとめ
・新規事業は「弱者の戦い」から始まる
・弱者は一点集中(局地戦)が基本
・大企業でも新規領域では弱者(ここを間違える会社が多い)
・だから「一点集中できる強み探し」がネタ出しの本質
新規事業を推進する立場の人は、一度「ランチェスター戦略」を学んでみると良いかもしれません。
私のセミナーや講演でも、このような話を織り交ぜています。興味があればお気軽にお声がけください。
「少し良い」は売れない:商品化への壁
新規事業創出のセミナーでは、よくこうお伝えしています。
「少し良い」程度の商品は、基本的に売れにくい。
だから新規事業としては厳しい。
なぜか。理由はシンプルで、スイッチングコスト(乗り換えのコスト)があるからです。
研究者が見がちな価値と、採用側が見ている価値は違う
研究者はどうしても「技術の価値そのもの」に目が向きがちです。
しかし採用側は、価値を “既存品との比較” で判断します。
たとえば、ある材料の性能が 1.2倍 になったとします。
技術としては確かに良い。でも採用側は次のような点までセットで考えます。
・置き換えたときにプロセス条件は変わらないか
・歩留まりや安定性は大丈夫か
・長期信頼性(寿命・劣化・再現性)は担保できるか
・供給・品質保証・規格対応は整っているか
・評価・認証・切替え試験にどれだけ工数がかかるか
つまり、採用側の脳内では「1.2倍の性能アップ」はこう翻訳されます。
「性能は上がるけど、評価と切替えが面倒。リスクも増える。その労力に見合うほどのメリットか?」
だから1.2倍程度の改善では「見送り」になりやすい。これは性能だけでなく、コストが20%下がった場合でも同じです。
切替えにかかる工数・リスク・評価費用を考えると、「20%安い」だけでは動かないことが多いのです。
スイッチングコストは、思っている以上に重い
既存のものからスイッチさせるには、意外とお金と時間がかかります。
結局のところ、一通り置き換えてみて、全部チェックしないといけないからです。
この「全部チェック」が曲者で、評価が長引けば長引くほど、現場の優先順位は下がり、担当者も変わり、立ち消えになりがちです。
「少し良い」ではなく「これでなければならない」が突破口
一方で、「少し良い」ではなく、「これでなければ解決できない」
というレベルの価値を提供できると、スイッチングコストを度外視してでも採用されやすくなります。
よくペインニーズと言いますが、これは単なる改善ではなく、
既存品では解決が難しかった“根本課題”を潰すタイプの価値です。
・不良が止まらない
・法規制・環境対応で現行品が使えなくなる
・信頼性が足りず市場クレームになる
・生産性がボトルネックになっている
・そもそも実現できない性能を実現する
こういう“痛み”を解決するものは強い。多少高くても、切替えが大変でも動きます。
新規テーマは「価値仮説を顧客検証で磨く工程」になりやすい
ただ、ペインニーズまで解決できる商品は、正直めったにありません。だから新規テーマは、最初から正解に辿り着くというより、
・仮説を立てる
・試作する
・顧客と話す
・ずれる
・直す
・もう一度試す
という地道な仮説検証の繰り返しになります。しかも面白いのは、最初は見えていなかったニーズが、途中で見つかることも多い点です。
そのため、できるだけ早くサンプルを作り、顧客と対話するのが望ましいです。
最近ではこれをラピッドプロトタイピングと言いますが、まさに新規事業にとって重要な行為になります。
研究開発した商品の「目指す売上」は、いくらが正解か?
コンサルティングでよく聞かれる質問があります。
「新規テーマって、売上いくら見込めたら成立しますか?」
結論から言うと、正しい答えはありません。
そして、最初から売上の“正解”を決めに行くほど、新規事業は外れやすくなります。
「100億円ないと意味がない」時代は、確かにあった
一昔前、大企業では
「新規事業は年商100億円規模が見えないとやる意味がない」
と言われていました。
例えば、銀塩写真で大きく儲けていた頃の富士フイルムのように、巨大な利益源がある時代では、売上の小さい事業は手間の割にメリットが薄い。
これは当時としては、合理的な判断でした。
でも今、最初から100億円が見える商品はほぼ無い
今の時代、最初から年商100億円が見える新規商品はほとんどありません。
市場は細分化され、ニーズも変化が速く、不確実性が高い。
つまり、
徹底調査
完璧な企画書
確実な実行
という一直線のやり方(図の左側)は、現実ではあまり機能しません。
私の答え:まず年商1億円で十分
質問への私の答えは、
「年商1億円あれば十分」
むしろ高いくらいだと思っています。
大切なのは金額そのものではなく、 市場は出してみないと分からない、だから小さく出して、早く確かめるという考え方です。
金額より「価値」を見る
売上議論がズレる原因は、「市場規模」や「金額」を先に見てしまうことです。
本当に重要なのは、 誰の困りごとをどれだけ強く解決できるか、他と何が決定的に違うか、価値が強ければ、市場は後から広がります。
価値が弱ければ、どれだけ調査しても売れません。
いま時代は「仮説→試作→評価→修正」
現実の新規事業は、多くがこの流れです。
ニーズと技術の仮説を立てる
サンプルを作る
市場で評価する
修正する(繰り返す)
商品化へ
会議で正しさを決めるのではなく、市場に聞いて決める。
この方が、結果的に早く確度も上がります。
売上目標は後からついてくる
まとめです。
今は最初から大きな売上を見通せる時代ではない 。「いくら売れるか」より「価値が強いか」を見る。最初は小さく検証し、修正しながら育てる。
新規事業は、完璧な企画書で当てに行くものではなく、仮説と試作で育てていくもの。
これが、現場で見てきた実感です。


