日々の気づき/ブログ
新規事業創出の成功に向けたMOT視点: ボトムアップアプローチのメリットとデメリット
新規事業の創出には、トップダウンとボトムアップの2つのアプローチが存在します。どちらの方法にも独自の長所と課題が伴うため、組織の状況や新規事業の特性に合致する方法の選択が肝要です。個人的な経験から言えば、ボトムアップのアプローチが成功率が高いと感じています。
以下に、この違いをまとめた表を示します。
最も重要な課題は、トップダウンの場合に見直しや撤退の判断が難しい点です。このため、現場の意見を適切に伝える難しさが生じ、結果として大きな損失を招くことがあります。またトップが認知し大きな市場を有するテーマは他社がすでにやっている可能性がありレッドオーシャンになりやすいです。
ボトムアップの方法は、現場のニーズやアイデアを受け入れやすいという利点がありますが、これをトップ層に適切に伝えることが挑戦です。デメリットとして、提案内容が経営戦略から乖離している可能性や、提案の品質の低さ、興味/趣味のテーマが提案されることが挙げられます。
ボトムアップアプローチのデメリットを克服するためには、研究者や開発者の教育が不可欠です。具体的には、MOT(技術経営)分野の学習が役立ちます。これにより、技術と経営の視点を結びつけ、経営戦略に合致した実行可能な提案を生み出す可能性が高まります。
研究者や開発者には、MOTを学ぶことをお勧めします。近年では多くの優れた教材や書籍が提供されており、独学で学ぶことが可能です。
また、私自身はMOTの実践的な研修を提供しており、興味があればぜひご連絡ください。
研修のページ
製造業の新規事業創出で失敗しない!個人コンサルタント活用のススメ
新規事業創出のコンサルティングを受けると、大手の場合、綺麗な厚い報告書が出てくるが、一般論が多く、なかなか役に立ちにくいという話を聞いたことがあります。前職では、数千万円の費用をかけて大手コンサルティングファームのコンサルティングを受けましたが、一般的な話がまとめられた報告書が出てきて、残念な思いをしたことがあります。たまたまかもしれませんが、相性や得意分野があるので、一概には言えません。
大手コンサルティングファームと個人のコンサルティングには、どのような違いがあるのでしょうか。大手コンサルティングファームは、多くのクライアントに対して共通のサービスを提供することが多いです。一方、個人のコンサルティングは、クライアントのニーズに合わせて、より柔軟なサービスを提供することができます。
なお、私の場合の専門性は、素材、製造業、デバイス製造、センサ、新規事業創出になるかと思います。
それぞれ一長一短がありますが、うまく利用して、成果につなげていただければと思います。
技術マーケティングとコンサルティングを融合した新規事業創出研修プログラム
研究者と開発者向けの新規事業創出を促進するための技術マーケティングとコンサルティングを組み合わせた研修プログラムを準備いたしました。
このプログラムでは、技術マーケティングの知識と戦略を座学だけでなく実践に落とし込むお手伝いをします。新規事業創出の観点から、共に保有する技術を分析し、市場を探索し、新規事業の提案書を作成していきます。これにより、知識を実際の提案に役立つ形で活用できます。さらに、必要に応じて技術に特化したコンサルティングも提供可能です。技術をベースにした新規ビジネスに特化したアドバイスとソリューションを提供し、新たな市場を開拓し、競争相手に差をつけるお手伝いを行います。
プログラムの概要
技術マーケティング研修: 技術マーケティング(MOT)の戦略的な側面を学び、企業での新規事業創出の実例と具体的な事例を交えて理解を深めます。
技術コンサルティング: 前述の研修で学んだ知識を活かし、新規事業創出のためのアイデア出し、テーマ選定、企画書の作成を実践的に行います。企画書はゲートシステムに基づいて検討し、漏れのないように検討いたします。その際の課題に対してコンサルティングサポートを提供し、目標に合わせたカスタマイズされたソリューションを提供し、実行に支援します。
想定人数: 5名から15名
期間: 約6ヶ月
新規事業の成功を妨げる大企業病とその克服策
新規事業を進める上で避けたい大企業病があります。以下がその課題です。
・チャレンジの減少
既存事業が安定している企業ほどチャンジ精神が少ないのではないでしょうか。新規事業の場合はチャレンジしても成功する確率よりも失敗する確率の方が高く、ボーナスの査定も下がってしまいます。更にチャレンジしたいと思う若い人が会社に見切りをつけて転職することもあります。そのようなことが繰り返されるとチャレンジする文化がなくなっていきます。
・臨機応変に対応できない
新規事業は進めていくうちに当初の計画と異なる形に変化する場合が多々あります。それは顧客のニーズが明確になってきたり、背景技術が進歩していったり、新たな技術が開発できたりするからです。しかしながら大企業の場合は、きっちりと計画を立てて、計画通り進める文化がありますから、いい方向に変わっても、悪い方向に変わっても修正しにくいです。一度決めたことをやり通す大企業の文化が臨機応変な動きが必要な新規事業には向いていない場合があります。
・顧客よりも上司の機嫌を取る
大企業はしっかりとした組織ですので、ボーナスの査定、人事評価は上司が握っています。そのため顔色を伺うのはある程度は仕方ないのですが、顧客ニーズよりも上司の顔色、社内政治を新規テーマの進捗に影響させてはダメです。
・意思決定が遅い
縦割り組織が原因で、意思決定が遅くてチャンスを逃しがちです。秘密保持を結ぶのに、上司の許可、役員の許可が必要で、法務部のチェックが入り、締結まで最短で1ヶ月、だめだと3ヶ月ぐらいかかる。中小だと数日でできる。何かの判断をする際に担当者には裁量権がなく、意思決定ができない…。このような問題はスピード勝負のビジネスではありえないです。
対策はそれぞれの項目に対して進めていくしかないです。大企業の良い面の文化ややり方を変える必要があるため、私自身のおすすめは新規事業の組織は、従来組織と切り分けるのがいいのではと思っています。早い意思決定と顧客重視の思考、そして評価もチャレンジでしっかり評価することで、成功に近づくのではと思います。
特許分析からの未来予測:競争力を高める商品開発の戦略
特許の分析を通じて将来の商品開発を先取りする方法について、ブログでご紹介いたします。特許は新しい技術やアイデアを保護するために申請されますが、その内容は同時に公開されます。要するに、特許を読むことで、将来どのような商品が開発される可能性があるかが見えてきます。しかし、特許は専門的な用語や図表で記載されているため、一般の方にとっては理解が難しいことがあります。したがって、特許分析のスキルを身につけることで、競合他社や市場動向に先んじて、自社の商品開発に役立てることができるのです。
具体的には、最新の特許を解読することで未来の技術動向を予測できます(下図)。
例として、Appleの顔認証技術に関する特許を見てみましょう。ただし、これは筆者の独自の見解であり、正確性には欠ける可能性があることをご理解ください。
この特許は2009年に公開され、商品化は2017年に実現しました。その間、研究開発が行われていました(下図)。携帯電話メーカーであれば、Appleの特許に依存せず、競合力を維持するための技術を開発することも考えられるでしょう。しかし、他の企業にとっては、顔認証技術がスマートフォンに組み込まれることを前提に、新しいサービスや技術の開発を検討する重要な機会と言えます。
2009年にこの特許を読んだ企業は、以下のような問いかけを行うかもしれません:
- 顔認証技術がスマートフォンに組み込まれた場合、社会はどのように変わるか?
- 顔認証を活用した便益のあるサービスは何か?
- これらの要素を組み合わせて新しいプロダクトやサービスを提供できないだろうか?
このような視点から、自社の商品企画を練ることができます。そして、2017年に商品が実現する際には、他社に比べて圧倒的な競争優位性を持つことでしょう。
このように特許を読むことで、新しいビジネスのアイデアを発見することも可能です。私はコンサルティングにおいて、他社の特許を活用して新規事業のアイデアを練るお手伝いも行っております。お気軽にご相談ください。