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ブログ更新 : 新規事業の提案書には「途中下車戦略」を入れよう
https://fujii-tech.com/diary/252380
大企業で新規事業を提案すると、昔は偉い人から「100億円のビジネスになるのか?」と聞かれていました。
今はさすがに100億円のビジネスを一発で立ち上げるのは不可能だと認知されてきていますが、やっぱり数十億円のビジネスを描かなければ認めてもらいにくいと思います。
会社として大きな事業を期待する気持ちはわかります。でも、技術開発も顧客開拓もこれから手を付けるという段階で、いきなり100億円の事業をつくるのは不可能に近いと思います。とはいえ、「そんなの無理です」で終わらせてしまうと、話は先に進みません。
そこで提案書に入れたいのが、私が「途中下車戦略」と呼んでいる考え方です。
10年以上先の目標として、100億円を掲げるのはよいと思います。ただし、そこに必要な技術を最初からすべて開発しようとすると、投資が大きくなり、売上が立つまでの時間も長くなります。その手前に、今ある技術に少しの開発を加えれば参入できる市場はないでしょうか。要求性能を満たしやすい用途や、顧客への接点をつくりやすい市場から始めるのです。
例えば、最終目標に技術A・B・Cが必要なら、まずは技術Aで価値を提供できる用途を探す。そこで事業化し、顧客の反応を確かめ、技術を磨く。その実績を使って技術Bを追加し、さらに技術Cを加えて、大きな市場へ進みます。
途中の事業で得られるのは、売上だけではありません。実際に使われたデータ、品質や製造のノウハウ、顧客との信頼も残ります。収益が出れば、次の開発投資の一部を支えることもできます。ただし、小さな事業を始めれば何でもよいわけではありません。最終目標につながらない個別対応に追われて、次へ進めなくなる可能性もあります。
だから提案書には、「途中の事業で何を得て、次の市場でどう使うか」まで書くことが大切です。技術の達成度、顧客の反応、採算など、次の投資を判断する条件も示しておきたいところです。「将来は100億円を目指します。そのために、まずこの顧客に、この技術で価値を届けます。そこで得た技術・顧客・収益を、次の段階につなげます」こうした提案なら、大きな期待を、今日から動ける計画に変えられます。
新規事業の提案書には、遠い終点だけでなく、途中で事業が成立する駅も書く。途中下車しながら、最終目標を目指す道筋を示してみてはどうでしょうか。
ブログ更新 : 特許から見た光電融合
https://fujii-tech.com/diary/249602
最近、よく聞くようになった「光電融合」。
AIの普及でデータセンターの消費電力が増えていて、特にGPUやCPUの間で大量のデータをやり取りする部分が課題になっています。
今までは電気でデータを送っていましたが、高速になるほど損失も大きくなり、消費電力も増えてきます。
そこで、できるだけチップの近くで電気を光に変えて、光ファイバでデータを送ろうというのが光電融合の基本的な考え方です。
光で送れば、高速で大量のデータを比較的低い消費電力で送ることができます。では、実際にどんな技術が開発されているのか。
「光電融合」というキーワードで、最近の特許を少し調べてみました。
最初は、Siフォトニクスとかレーザーとか、半導体関係の特許が多いのかなと思っていました。ところが見てみると、かなり違いました。
大きく分けると、
材料 → デバイス → 導波路 → 実装 → 接続
と、かなり幅広いです。
材料では、ガラス、樹脂、接着材など。デバイスでは、レーザーや受光素子。
さらに光を通す光導波路、それを電子回路と組み合わせる実装技術、最後には光ファイバとつなぐコネクタまで出てきます。
企業としては、NTT、AGC、ダイキン、TOPPAN、古河電工、味の素、パナソニックなど。
半導体メーカーだけではないですね。
光を作る→ 光を通す→ 電子回路と一体化する→ 光ファイバにつなぐ
ということで、半導体以外も主要プレーヤーになってますね。
材料、光学、実装、精密加工、コネクタなど、いろいろな技術を組み合わせて初めて実用化できる技術なんだと思います。
AI時代になると、半導体そのものだけでなく、こうした「つなぐ技術」や「支える材料」にも大きな市場が出てきそうです。
実は化学メーカーの新規事業のネタだしでも光電融合を意識したアイデアがたくさん出てきています。
なかなか面白い分野ですよね。
ブログ更新 : 【研究開発の失敗例】技術は完成したのに市場に参入できなかった「タッチパネル開発」の教訓
https://fujii-tech.com/diary/247353
【研究開発の失敗例】技術は完成したのに市場に参入できなかった「タッチパネル開発」の教訓
ネット上やセミナーでは成功事例が多く出てますが、失敗事例はなかなか表に出てきません。
自身の失敗事例を少し曖昧にしてお話します。
個々の失敗経験を抽象化・普遍化することで、テーマ選びや事業化を成功に導くための共通の教訓が見えてくると思います。
「技術目標は達成したにもかかわらず事業化できなかった」という2000年頃の私自身が携わったタッチパネル開発の事例とその教訓をご紹介します。
2000年頃、自社の強みを活かしたPDA(携帯情報端末)向けの独自方式タッチパネルを開発しました。約2年でプロトタイプが完成し、性能面の目標を満たすなど技術的には高い成果を得たものの、商品化されることなくプロジェクトは中止されました。
なぜ市場参入できなかったのか?
技術は完成したのに事業化できなかった主な要因は以下の3点です。
・初期のマーケティング不足:「良いものを作れば売れる」という思い込みがあり、試作品を評価してくれる「仮の顧客」を確保していませんでした。
・市場を狭く捉えすぎた:当時のPDA市場しか見ておらず、「画面に触れて操作する」という機能が持つ大きな可能性と変化に気づけませんでした。皆さん御存知の通り、タッチパネルはその後色んなものに入って大ブレークしました。
・事業部門との連携の遅れ:試作品完成後に事業部門へ相談したため、事業部門としても判断が難しく、量産や販売へ主体的に動くことができませんでした。
失敗から得た教訓とその後
この痛い経験から、新技術の開発では「技術者自身が初期からマーケティングに関わり、仮の顧客と対話すること」、そして「特定の製品に固執せず、早期に事業部門を巻き込むこと」が不可欠だと学びました。
最初の開発は商品化に至りませんでしたが、この失敗は決して無駄ではありませんでした。
そこで蓄積された技術知識や市場への認識は失われず、約10年後のAgメッシュ型のタッチパネルへの参入と成功を支える土台となりました。
失敗は研究開発の終わりではありません。そこから何を学び、修正していくかが重要です。
得られた技術や知識は、次のテーマを生み出すための貴重な資産になります。
失敗を恐れず小さく試して学ぶ姿勢が、新しい事業を生み出す力になると思います。
セミナーのご紹介 : 【即実践できる】 自社技術の「新規事業ネタ」の見つけ方 ~特許×AIで新規事業テーマを創出する実践手法~ 【ライブ配信】 2026年9月25日(金) 13:00~16:30
今回のセミナーではAIを使った新規事業創出のやり方も公開します!
【即実践できる】
自社技術の「新規事業ネタ」の見つけ方
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【ライブ配信】 2026年9月25日(金) 13:00~16:30
https://www.science-t.com/seminar/K260925.html
時代の変化が加速する中、技術者・研究者には「次に何を開発すべきか」、「自社技術をどの市場へ展開すべきか」が常に問われています。しかし、新規事業のネタ出しは個人のセンスだけに頼る必要はありません。
本セミナーでは、既存事業が停滞する理由とMOT(技術経営)の基本を整理したうえで、講師が富士フイルム時代に培った経験をもとに、
自社技術の「強み」を棚卸しし、成長市場と結びつける論理的な「出口探索」の進め方を解説します。さらに、特許情報を「未充足ニーズと解決策」の情報源としてAIで効率的に読み解き、フォアキャスト、バックキャスト、バリューチェーン分析を組み合わせて、技術起点の新規事業テーマの骨格をつくる実践的な手法を学びます。
ブログ更新 : 圧電デバイスからパワー半導体までを支える材料「AlN」
https://fujii-tech.com/diary/244012
窒化アルミニウム、AlN。
学生の頃、磁性材料の研究で、磁性膜を配向させるための下地膜としてAlNをスパッタしていました。
当時は「Alターゲットを窒素雰囲気でスパッタして作る下地材料」くらいの認識でした。
改めて物性を見ると、なかなか面白い材料です。
ざっくり言えば、電気は流さないのに、熱はよく流す。しかも圧電性がある。という面白い材料です。
・GaNの下地
最近GaN関係を見ていると、AlNを下地やバッファとしてよく目にします。
実はこれは古くから重要な技術で、サファイアとGaNの間にAlNバッファ層を入れることでGaNの結晶性を改善できます。
現在でもGaN系LED、パワーデバイス、高周波デバイスなどで重要な材料です。
学生時代に磁性膜の「下地」として使っていたAlNが、別の世界でも重要な下地材料になっていたわけです。
・圧電材料
圧電材料としては地味だと思っていました。
その後PZTを研究するようになってからは、正直AlNにはあまり興味がありませんでした。
PZTという圧電材料の強者がいたからです。AlNの圧電定数はPZTに比べるとかなり小さいです。
ところが、センサでは圧電定数だけでは決まりません。
AlNは誘電率が低く、高い音速、高Q、低損失といった特徴があります。そのため高周波用途ではむしろ強みになります。
そのAlN薄膜の代表用途が、FBAR(薄膜バルク音響共振器:Film Bulk Acoustic Resonator)です。
圧電薄膜を電極で挟み、GHz帯で振動させます。この共振を利用してスマートフォンなどの高周波フィルタを作ります。
さらにScAlNへ
そしてAlNをさらに面白くしたのが、ScAlN(Sc添加AlN)です。
AlNにScを添加すると圧電性が大きく向上し、AlNの数倍の圧電応答が得られます。
報告例ではAlNの (d33) 約5.5 pC/Nに対し、ScAlNでは30 pC/N前後まで向上しています。
これで鉛を使わない圧電材料として大きく用途が広がりました。
薄膜AlN系の用途を並べると、
GaN/AlGaNの下地
FBAR/BAWなど高周波フィルタ
MEMSマイク/振動センサ
PMUTなど超音波デバイス
エネルギーハーベスティング
ScAlNによる高性能圧電/強誘電デバイス
など、かなり広がっています。
個人的には、熱伝導率が高いということでもっと新しい用途があるのではと思っています。
今の半導体は熱を逃がすのが大きな課題になっていますからね。
材料の価値は、一つの物性値や用途だけでは決まらないですね。
用途や周辺技術が変われば、昔は脇役だった材料が主役になる。
面白い材料なので、次の主役となる分野を新規テーマとして進めるのはどうでしうか?


