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ブログ更新 : 圧電デバイスからパワー半導体までを支える材料「AlN」
https://fujii-tech.com/diary/244012
窒化アルミニウム、AlN。
学生の頃、磁性材料の研究で、磁性膜を配向させるための下地膜としてAlNをスパッタしていました。
当時は「Alターゲットを窒素雰囲気でスパッタして作る下地材料」くらいの認識でした。
改めて物性を見ると、なかなか面白い材料です。
ざっくり言えば、電気は流さないのに、熱はよく流す。しかも圧電性がある。という面白い材料です。
・GaNの下地
最近GaN関係を見ていると、AlNを下地やバッファとしてよく目にします。
実はこれは古くから重要な技術で、サファイアとGaNの間にAlNバッファ層を入れることでGaNの結晶性を改善できます。
現在でもGaN系LED、パワーデバイス、高周波デバイスなどで重要な材料です。
学生時代に磁性膜の「下地」として使っていたAlNが、別の世界でも重要な下地材料になっていたわけです。
・圧電材料
圧電材料としては地味だと思っていました。
その後PZTを研究するようになってからは、正直AlNにはあまり興味がありませんでした。
PZTという圧電材料の強者がいたからです。AlNの圧電定数はPZTに比べるとかなり小さいです。
ところが、センサでは圧電定数だけでは決まりません。
AlNは誘電率が低く、高い音速、高Q、低損失といった特徴があります。そのため高周波用途ではむしろ強みになります。
そのAlN薄膜の代表用途が、FBAR(薄膜バルク音響共振器:Film Bulk Acoustic Resonator)です。
圧電薄膜を電極で挟み、GHz帯で振動させます。この共振を利用してスマートフォンなどの高周波フィルタを作ります。
さらにScAlNへ
そしてAlNをさらに面白くしたのが、ScAlN(Sc添加AlN)です。
AlNにScを添加すると圧電性が大きく向上し、AlNの数倍の圧電応答が得られます。
報告例ではAlNの (d33) 約5.5 pC/Nに対し、ScAlNでは30 pC/N前後まで向上しています。
これで鉛を使わない圧電材料として大きく用途が広がりました。
薄膜AlN系の用途を並べると、
GaN/AlGaNの下地
FBAR/BAWなど高周波フィルタ
MEMSマイク/振動センサ
PMUTなど超音波デバイス
エネルギーハーベスティング
ScAlNによる高性能圧電/強誘電デバイス
など、かなり広がっています。
個人的には、熱伝導率が高いということでもっと新しい用途があるのではと思っています。
今の半導体は熱を逃がすのが大きな課題になっていますからね。
材料の価値は、一つの物性値や用途だけでは決まらないですね。
用途や周辺技術が変われば、昔は脇役だった材料が主役になる。
面白い材料なので、次の主役となる分野を新規テーマとして進めるのはどうでしうか?
ブログ更新 : MOT(技術経営)とは?〜優れた技術がビジネスで選ばれない理由〜
https://fujii-tech.com/diary/241408
MOT(技術経営)とは?〜優れた技術がビジネスで選ばれない理由〜
「技術開発には成功したのに、事業としては失敗した…」
技術者や研究者の方なら、一度はそんな苦い経験や葛藤があるのではないでしょうか。
技術を単なる研究成果で終わらせず、ビジネスの価値に変えていく考え方「MOT(技術経営)」についてお話しします。
■ MOT(技術経営)とは?
MOTとは、技術を効果的に活用して経営を行うことです。 技術そのものを深めるだけでなく、市場、顧客、知財、事業戦略と結びつけ、「企業価値」や「社会的価値」へつなげていくための思考法ですね。
■ 技術が優れているだけではダメ
研究現場にいると、どうしても「より高性能に」「より低コストに」と技術そのものに目が向きがちです。
自分が得意な分野ですし、活躍の場ですからね。ですがビジネスでは、どれほど画期的な技術でも「顧客の課題を解決していなければ」採用されません。量産性やコストが合わなければ市場にも入れない。「こんな素晴らしい技術なんだから採用しろ!」と言っても選ばれないのは当然なんですね。
「良いものを作れば売れる時代」は終わりました。
技術を深めるのと同時に「その技術をどこで使えば価値になるのか?」をセットで考える必要があります。
■ 事業を成功に導く「問い」
開発を進める際は、常にこんな問いを持つことが大切です。
その技術は、誰のどの課題を解決するのか?
顧客はお金を払ってでも解決したいのか?
既存技術と比べて、なぜ選ばれるのか?
自社が勝てる理由(知財・コスト等)はあるか?
ここを曖昧にしたままだと、「性能は出たが顧客がいなかった」「特許は取れたが出口がない」といった失敗に陥りがちです。
MOTとは、技術と事業戦略をしっかり接続するための視点なのです。
■ MOTは学びやすい時代へ
私が学び始めた当時は「MOT」という言葉も一般的ではなく、「技術者向けマーケティング」といった雰囲気でした。
いろんな方の講演を聞き、関連本を読み漁って独学で身につけたものです。
しかし、今は専門書も充実していて、本当に学びやすくなったなと感じます。
いい本がたくさんありますから、書籍を探してみてください!
■ 研修・セミナーのご案内
当事務所では、MOTの初歩的な講演と、自社の強みを活かした新規事業の「ネタ出し」をセットにした研修を行っています。
「研究成果を事業につなげたい」「新規事業のアイデア出しで苦戦している」という企業様は、ぜひお気軽にご相談ください!
ブログ更新 : AIを使って15分で新規事業テーマを考えてみた
https://fujii-tech.com/diary/239682
新規事業のテーマを5件考え、そのうち1件を事業構想図にまとめる。
ここまで、生成AIを使って約15分でした。
もちろん、AIが出した案をそのまま事業化できるわけではありません。
それでも、新規事業の初期アイデアを広げる手段としては、かなり使えると感じています。
今回は、ペロブスカイト酸化物を題材に、新規事業テーマを考えてみました。
事前に市場や技術動向、社会課題などを調査しておけば、プロンプト自体は比較的簡単でも、ある程度具体的な案を出すことができます。
まず、5件のテーマ案を表にまとめてもらいました。
「ペロブスカイト酸化物を用いた水素製造・SOEC用高耐久電極材料」
について、社会課題、技術コンセプト、用途、開発ロードマップを一枚の図にまとめました。
ここまでの全工程で約15分です。
当然ながら、技術的な実現性、既存技術との差別化、顧客ニーズなどは、さらに検証する必要があります。
初期のたたき台としては参考にできるレベルかなと思います。
技術以外の部分として資料の構成や考え方は良いと思います。
AIで複数の仮説を短時間で出し、技術者や事業担当者が修正していけば、それなりのテーマに仕上げることができます。
今後の新規事業のネタ出しは原理原則に基づいた指示をAIに行い、
AIで可能性を広げ、専門家が事業に仕上げる。
という流れになるかもしれません。
今回紹介した方法や、さらに工夫したテーマ創出の方法については、今後どこかの機会でお話しできればと思います。
ブログ更新 : 研究者が社内を説得するには、社外(顧客候補)を使う
https://fujii-tech.com/diary/238539
研究者が社内を説得するには、社外(顧客候補)を使う
大企業の新規事業では、社内だけで議論していると前に進まないことがあります。
「本当に売れるのか?」
「リスクはないのか?」
「前例はあるのか?」
「誰が責任を取るのか?」
こうした問いが重なり、石橋を叩きすぎて、結局渡らない。これはよくある話です。
では、どうすればよいのか。
私は、研究者が社内を説得するには、社外を使うべきだと思います。顧客、共同開発先、大学の先生、社外有識者、実証先、販売パートナー。こうした外部の存在があると、社内の見え方が変わります。社内で「この技術は有望です」と言うだけでは弱い。
しかし、顧客が「試してみたい」と言う。
共同開発先が「一緒にやりたい」と言う。
社外有識者が「この方向は面白い」と言う。
そうなると、社内は動きやすくなります。
ただし、ここで勘違いしてはいけません。社外を使うといっても、単に有名な先生や大企業の名前を借りればよいわけではありません。外部の人が乗りたくなるだけのモノが必要です。話を聞いた人が「それなら試す価値がある」と思えるストーリー、事実が必要です。
研究者がやるべきことは、技術を説明することだけではありません。技術を、顧客課題や市場機会につなげるストーリーに変えることです。社内を動かすには、社外の信用を使う。
しかし、社外を動かすには、相手が乗りたくなるモノとストーリーが必要です。新規事業で問われるのは、技術力だけではありません。
社外を巻き込み、社内を動かす構想力です。
私は技術系企業向けに、新規事業テーマの整理、顧客候補の探索、仮説検証、社内説明ストーリーづくりを支援しています。
技術はあるが社内が動かない。
顧客や共同開発先をどう巻き込めばよいかわからない。
そのような場合は、ご相談ください!
ブログ更新 : 大企業の研究開発は、なぜ失敗しそうでも途中で止められないのか?
https://fujii-tech.com/diary/236306
大企業の研究開発は、なぜ失敗しそうでも途中で止められないのか?
大企業では、役員や研究所長、事業部長が主導する大きな研究開発プロジェクトや新規事業プロジェクトが立ち上がることがあります。
多くの予算、人員、時間を投入する重要プロジェクトです。しかし、途中で市場環境が変わったり、技術の前提が変わったりしても、簡単には止められないことがあります。
そのような事例を見てきた方は多いと思います。
なぜでしょうか。
私は、この現象は慣性の法則に近いと思っています。
大きな物体は、一度動き始めると簡単には止まりません。同じように、大企業の研究開発も、関係者が増え、予算がつき、経営層の案件になるほど、プロジェクト自体が大きな「慣性」を持ちます。
現場から、
・市場が変わっている
・顧客ニーズが変わっている
?技術の前提が変わっている
という声が出ても、すぐには方向転換できません。
「ここまで投資したのだから」「役員案件だから」という理由で、そのまま進み続けてしまうこともあります。
しかし、市場も技術も待ってくれません。
だから今の時代に必要なのは、最初から重厚長大なプロジェクトを組むことではなく、小さく始め、市場を見ながら素早くPDCAを回し、必要なら方向転換する進め方です。変化を認めることも、研究開発マネジメントの重要な仕事だと思います。
おわりに
研究開発の成功は、技術力だけでは決まりません。
市場の変化を読み、技術の前提を見直し、必要に応じて方向転換できることが重要だと考えます。
研究開発テーマの見直し、新規事業の方向性整理、技術シーズからの市場探索でお困りでしたら、ご相談ください。
技術と市場の両面から、事業化につながる研究開発テーマを一緒に整理いたします。


