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なぜ新規事業創出は難しいのか?

3つの構造的な理由

新規事業が生まれにくいのは、アイデア不足だけが理由ではありません。
むしろ多くの場合、テーマの選び方そのものに問題があります。
 

製造業の現場を見ていると、社内で「通りやすいテーマ」と、実際に「勝ちやすいテーマ」がズレていることがよくあります。
このズレがある限り、新規事業はなかなか育ちません。

今回は、その典型例を3つに分けて整理してみます。 


1)トレンド分野は通りやすいが、競争が激しすぎる

経営層や管理職は、どうしてもトレンド分野に注目しがちです。 

例えば、2019年に吉野彰さんがノーベル賞を受賞した後、「これからは電池の時代だ」「EVだ」という流れが一気に強くなりました。実際、多くの会社で電池関連テーマが立ち上がったと思います。

しかし、その後どうなったでしょうか?
今も残っているテーマは、かなり絞られているはずです。

 理由は単純で、トレンド分野にはライバルが大量に参入するからです。

・市場が大きく見える
・成長率も高く見える
・社内説明しやすい
・「乗り遅れるな」という空気がある
その結果、多くの企業が同じ方向に動きます。
 

すると、コスト競争性能競争が一気に激しくなります。
参入しやすそうに見えて、実際にはごく一部しか生き残れない消耗戦になりがちです。


 
2)既存市場は大きく見えるが、スイッチングコストが高い

次に多いのが、
市場が明確で、既存商品がはっきりしている分野への参入です。
こういうテーマは、売り先が想像しやすいため、社内で承認されやすいです。
 

例えば、

・既存品より高性能
・既存品より低コスト
・今の市場にそのまま入れそう

という説明は、一見わかりやすいです。ただ、実際には大きな壁があります。
それがスイッチングコストです。

顧客は、今使っている材料や部品を簡単には切り替えません。新しいものを入れるには、 

・安全性
・品質の安定性
・長期信頼性
・工程適合性
・調達継続性

などを厳しく見ます。
つまり、「少し性能がいい」、「少し安い」程度では、置き換えは進みにくいのです。

既存市場は大きく見えますが、その分だけ参入障壁も高い。ここを甘く見ると、開発しても採用されません。 


3)新しいテーマは、「市場が見えない」で止められる

では、まだ市場が見えていない新しいテーマならどうか。
今度は別の問題が出ます。

研究者や開発者が新しいテーマを提案すると、社内ではこう言われがちです。

・「それって市場あるの?」
・「どれくらい売れるの?」
・「利益は?」
・「3年後の売上は?」

もちろん、確認すること自体は悪くありません。
ただ、新しいテーマほど、最初からそこまで明確には見えないのが普通です。
にもかかわらず、既存事業と同じ解像度で説明を求められる。
その結果、最後は
「よくわからないから見送り」

となってしまいます。


つまり、社内で通りやすいテーマと、勝てるテーマがズレている

ここまでを整理すると、問題の本質はシンプルです。

・トレンド市場は競争が激しい
・既存市場は参入障壁が高い
・新しい市場は見えないことを理由に止められやすい
 

つまり、社内で承認されやすいテーマが、事業として勝ちやすいとは限らないということです。

この構造がある限り、「新規事業をやろう」と言いながら、実際には勝ちにくい≒負けやすいテーマばかり選んでしまうことになります。
これが、新規事業創出が難しい大きな理由です。


では、どうすればよいのか?

このあたりは、私が講演や研修でも具体的にお伝えしているのですが、重要なのは、トレンドを追うことではなく、自社の強みが活きる場所を見つけ、小さく試しながら育てることです。
新規事業は、最初から完璧な市場予測で決めるものではなく、仮説検証しながら勝ち筋を作っていくものだと思います。
 


まとめ

新規事業創出が難しいのは、

・トレンド市場は競争が激しい
・既存市場はスイッチングコストが高い
・新しい市場は見えないことを理由に止められやすい

という構造があるからです。
だからこそ、社内で通りやすいかどうかだけではなく、本当に勝てるかどうかでテーマを見ないといけません。

 

皆さんの会社では、どうでしょうか。

 

 市場.jpg

 

 

 

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【実践編】クロスSWOTのやり方:町のラーメン屋で「4象限の戦略」を作ってみた

 (前回:「意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)」の続き)

 

前回は、SWOT分析は「整理」ではなく、クロスSWOT(クロス分析)で戦略立案に落とす道具だ、という話をしました。SO/WO/ST/WT4象限まで決めた瞬間に、SWOTは化けます。

今回は続きとして、クロスSWOTの具体的なやり方を、超ベーシックな事例で説明します。
題材は「町のラーメン屋」。生々しい技術の話より、こちらの方がイメージしやすい思います。でも、これが意外と本質を突きます。


1. まずSWOT分析を作る(盛らない)

町のラーメン屋(個人店)を想定します。

 S(強み):味に定評がある/常連客が多

 W(弱み):店主1人で回している/営業時間が短い

 O(機会):デリバリー需要増/SNS拡散

 T(脅威):大手チェーンの出店/原材料高騰

ポイントは、正直に盛らずに置くことです。
今回はありきたりな情報ですが、実際にやるときは現状をしっかり分析して入れてください。ここで格好をつけると、後段の戦略が全部ズレます。
 


2. 次にクロスSWOT4象限に「戦略」を置く(まずは雑でいい)

クロスSWOTの良いところは、会議が「だからどうする?」に進むことです。
まずは各象限に、施策(戦略)を考えます。
 

SO(強み×機会):攻める(成長戦略)

味の定評 × SNS拡散看板メニューをストーリー化して発信

常連が多い × デリバリー需要常連向けの持ち帰り導線を作る

ST(強み×脅威):守りながら差別化(防衛戦略) 

味の定評 × 大手出店大手と同じ土俵で戦わず専門特化する

常連が多い × 価格競争常連向けの限定メニューで囲い込む

WO(弱み×機会):補完・改革(変革戦略) 

1人運営 × デリバリー需要メニューを絞ってオペを簡略化

営業時間が短い × SNS拡散営業時間外でも売れる形(予約/冷凍など)を検討

WT(弱み×脅威):縮小・撤退(撤退戦略) 

1人運営 × 原材料高騰原価の高いメニューを整理し看板に集中

営業時間が短い × 大手出店無理な多店舗展開はしない(固定費増は致命傷)

これによりSWOT並べただけでは見えない、攻め/守り/改革/撤退が見えるようになります。 


3. ここからが本番:戦略(=意思決定)を決める3つの問い

クロスSWOTは、最後に**戦略を選ぶ(意思決定する)ために使います。
私がよく使う問いはこの3つです。
 

最も効くSOはどれ?(効果が大きいのは何か)

最も危険なWTはどれ?(放置すると致命傷か)

WO1つだけやるなら?(弱みのボトルネックは何か)

例えばこのラーメン屋なら、 

今月のSO:看板メニューのストーリー発信(SNS

最優先WT:原材料高騰への対応(メニュー整理/価格設計)

最重要WO1人運営の限界メニュー絞り込みで回す

のように決められます。 


4. 正解は1つじゃない。でも戦略は決められる

もちろん、ラーメン屋の戦略に唯一の正解はありません。
ただし、クロスSWOTの目的は「正解探し」ではなく、戦略を考える=意思決定することです。
 


まとめ:SWOT分析は並べるから戦略に落とす
今回は実践編として、町のラーメン屋の事例でクロスSWOTSO/WO/ST/WT)の4象限戦略を作ってみました。次にSWOT分析をやるなら、まずは4象限に「戦略」を置くところから始めてみてください。

いろんな分野に適用できるのでいろいろとやってみてください。 

新規事業創出の研修/現場では各自が持ちよった新規テーマネタに関して、このような取り組みを喧々諤々とみんなで議論して進めています。

 

 

 

 クロスSWOTラーメン屋.jpg

 

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意外と使えるSWOT分析(クロスSWOT)
― 研究開発と経営戦略の方向性を同時に決める道具 ―

 

SWOT分析は古い。昔からよくありますからね。
でも、本当に使いこなせていますか?形だけやって終わっていませんか?

 

強み・弱み・機会・脅威を書き並べただけでは、経営の意思決定はできません。
SWOT分析の本質は「整理」ではなく、経営戦略や研究開発戦略の方向性を決めるための掛け算です。
つまり、クロスSWOT(クロス分析)が重要になります。

 


 

 

重要なのは4つのクロスです。

SO(強み×機会):攻める(成長戦略)

・WO(弱み×機会):補完・改革する(変革戦略)

・ST(強み×脅威):守りながら差別化する(防衛戦略)

・WT(弱み×脅威):縮小・撤退する(撤退戦略)

経営判断とは、結局のところ「このどれを選ぶか」を決めることです。

 


 

研究所でよくある議論は、

 

「この技術は面白い」
「世界初だ」

 

で止まります。

 

しかし、経営視点で問うべきは次の3点です。

・その技術は、どの機会(市場・規制・顧客課題)と掛け算になるのか

・どの脅威(競合・価格下落・代替技術)に対する武器になるのか

・弱み(量産性・コスト・販売力・信頼性)と組み合わさって失速しないか

 

ここから「だからどうする?」「何に注力する?」「何は捨てる?」という、研究テーマの選定・優先順位付けに落とせます。

 

例えば、

・独自材料技術 × 環境規制強化
  → SO:攻めの研究テーマ(用途開拓・先行投資)

・高性能だが高コスト × 価格競争激化
  → WT:やらない判断(撤退・縮小・別市場へ)

 

ここまで整理すると、研究テーマの優先順位が変わります。
さらに言えば、SWOT分析は単なる研究整理ツールではなく、事業ポートフォリオの整理(伸ばす/立て直す/守る/やめる)にも使えます。

 


 

 

よくある会議は、強みの話で終わる、市場の話で終わる、技術自慢で終わる、ということが多くないですか?

 

クロスSWOTをすると、「では、攻めるのか、守るのか、やめるのか?」まで踏み込めます。
戦略の選択肢が可視化され、経営会議で意思決定がしやすくなります。

 


 

 

SWOT分析が使えないのではありません。
掛け算までやって、経営戦略・研究開発戦略に落とし込めていないだけです。

 

研究の方向性、事業の方向性、撤退判断。
それらを同時に整理できるシンプルな道具は、実は多くありません。

 

SWOTは、本気で使えば今でも十分に戦略を生みます。
意外と、使えます。

 

次に経営会議でSWOTをやるなら、「クロスSWOTで4象限の戦略(SO/WO/ST/WT)まで決める」と決意してください。
“整理”ではなく“意思決定”の道具になった瞬間、SWOT分析は化けます。

ぜひ使ってみてください!

 

SWOT分析.jpg

 

 

 

 

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新規事業は局地戦 ~ランチェスター戦略で考える~

 

新規事業でいちばん大事なのは、最初から「局地戦」だと割り切ることです。
ここを外すと、どれだけ良い技術や良いアイデアがあっても、競合の土俵で消耗して負けてしまいます。

 

特に大企業ほど、新規事業を「広域戦」で考えて失敗しがちです。既存事業の感覚のまま「市場を広く取りに行こう」「用途を広げよう」としてしまうからです。

 


 

局地戦・広域戦とは何か(ランチェスター戦略の発想)

 

局地戦・広域戦は、ランチェスター戦略の考え方です。
ビジネスを戦いに例えると、次のように整理できます。

・局地戦:一点集中で「勝てる場所」だけで戦う
(顧客・用途・条件・地域・チャネルなどを絞る)

・広域戦:広い市場で総合力勝負をする
(ブランド、資金、販路、人員が揃った“強者向け”)

 

違いはシンプルで、弱者は局地戦、強者は広域戦です。これがランチェスター戦略です。

 


 

新規事業は「大企業でも弱者」になる

 

ここで重要なのは、新規事業は大企業がやっても弱者になるという点です。
新規領域では、予算・人・実績・顧客接点が限られます。社内でも優先順位が上がりにくく、意思決定も遅れがちです。つまり、既存事業で持っている「強さ」は、新規領域にはそのまま持ち込めません。

 

だから新規事業は、会社規模に関係なく 「弱者の戦い方=一点集中」 が基本になります。

 

一方で大企業は、自社の社格や過去の成功体験、既存事業の規模感に引っ張られて、ここを間違えやすいです。

特に意思決定層ほど過去の成功体験や売上至上主義の観点から「広く獲りにいく発想」が強く、局地戦の設計が甘くなりがちです。

 


 

テーマ選定の本質は「一点集中できる核」を作ること

 

結局、新規事業のテーマ選定で最重要なのは、
一点集中できる強み(=自分が勝てる局地)を見つけ、それを核にすることです。

 

「どこに集中するか」が曖昧なままスタートすると、テーマは広がり、説明も散らかり、結果的に強者の土俵で戦うことになります。
逆に、局地が決まれば、やること(検証・開発・営業)が一気に絞れ、スピードも精度も上がります。

 


 

・新規事業は「弱者の戦い」から始まる

・弱者は一点集中(局地戦)が基本

・大企業でも新規領域では弱者(ここを間違える会社が多い)

・だから「一点集中できる強み探し」がネタ出しの本質

 

新規事業を推進する立場の人は、一度「ランチェスター戦略」を学んでみると良いかもしれません。
私のセミナーや講演でも、このような話を織り交ぜています。興味があればお気軽にお声がけください。

 

https://fujii-tech.com/info/6624246

 

新規事業創出のセミナーでは、よくこうお伝えしています。

「少し良い」程度の商品は、基本的に売れにくい。
だから新規事業としては厳しい。

なぜか。理由はシンプルで、スイッチングコスト(乗り換えのコスト)があるからです。

 

研究者が見がちな価値と、採用側が見ている価値は違う

研究者はどうしても「技術の価値そのもの」に目が向きがちです。
しかし採用側は、価値を “既存品との比較” で判断します。

たとえば、ある材料の性能が 1.2倍 になったとします。
技術としては確かに良い。でも採用側は次のような点までセットで考えます。

・置き換えたときにプロセス条件は変わらないか

・歩留まりや安定性は大丈夫か

・長期信頼性(寿命・劣化・再現性)は担保できるか

・供給・品質保証・規格対応は整っているか

・評価・認証・切替え試験にどれだけ工数がかかるか

つまり、採用側の脳内では「1.2倍の性能アップ」はこう翻訳されます。

「性能は上がるけど、評価と切替えが面倒。リスクも増える。その労力に見合うほどのメリットか?」

だから1.2倍程度の改善では「見送り」になりやすい。これは性能だけでなく、コストが20%下がった場合でも同じです。
切替えにかかる工数・リスク・評価費用を考えると、「20%安い」だけでは動かないことが多いのです。

 

スイッチングコストは、思っている以上に重い

既存のものからスイッチさせるには、意外とお金と時間がかかります。
結局のところ、一通り置き換えてみて、全部チェックしないといけないからです。

この「全部チェック」が曲者で、評価が長引けば長引くほど、現場の優先順位は下がり、担当者も変わり、立ち消えになりがちです。

 

「少し良い」ではなく「これでなければならない」が突破口

一方で、「少し良い」ではなく、「これでなければ解決できない」

というレベルの価値を提供できると、スイッチングコストを度外視してでも採用されやすくなります。

よくペインニーズと言いますが、これは単なる改善ではなく、
既存品では解決が難しかった“根本課題”を潰すタイプの価値です。

・不良が止まらない

・法規制・環境対応で現行品が使えなくなる

・信頼性が足りず市場クレームになる

・生産性がボトルネックになっている

・そもそも実現できない性能を実現する

こういう“痛み”を解決するものは強い。多少高くても、切替えが大変でも動きます。

 

新規テーマは「価値仮説を顧客検証で磨く工程」になりやすい

ただ、ペインニーズまで解決できる商品は、正直めったにありません。だから新規テーマは、最初から正解に辿り着くというより、

・仮説を立てる

・試作する

・顧客と話す

・ずれる

・直す

・もう一度試す

という地道な仮説検証の繰り返しになります。しかも面白いのは、最初は見えていなかったニーズが、途中で見つかることも多い点です。

そのため、できるだけ早くサンプルを作り、顧客と対話するのが望ましいです。

最近ではこれをラピッドプロトタイピングと言いますが、まさに新規事業にとって重要な行為になります。

 

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