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【研究開発の失敗例】技術は完成したのに市場に参入できなかった「タッチパネル開発」の教訓

ネット上やセミナーでは成功事例が多く出てますが、失敗事例はなかなか表に出てきません。
自身の失敗事例を少し曖昧にしてお話します。
個々の失敗経験を抽象化・普遍化することで、テーマ選びや事業化を成功に導くための共通の教訓が見えてくると思います。

「技術目標は達成したにもかかわらず事業化できなかった」という2000年頃の私自身が携わったタッチパネル開発の事例とその教訓をご紹介します。  
2000年頃、自社の強みを活かしたPDA(携帯情報端末)向けの独自方式タッチパネルを開発しました。約2年でプロトタイプが完成し、性能面の目標を満たすなど技術的には高い成果を得たものの、商品化されることなくプロジェクトは中止されました。  

なぜ市場参入できなかったのか?
技術は完成したのに事業化できなかった主な要因は以下の3点です。 

・初期のマーケティング不足:「良いものを作れば売れる」という思い込みがあり、試作品を評価してくれる「仮の顧客」を確保していませんでした。  
・市場を狭く捉えすぎた:当時のPDA市場しか見ておらず、「画面に触れて操作する」という機能が持つ大きな可能性と変化に気づけませんでした。皆さん御存知の通り、タッチパネルはその後色んなものに入って大ブレークしました。  
・事業部門との連携の遅れ:試作品完成後に事業部門へ相談したため、事業部門としても判断が難しく、量産や販売へ主体的に動くことができませんでした。  

失敗から得た教訓とその後
この痛い経験から、新技術の開発では「技術者自身が初期からマーケティングに関わり、仮の顧客と対話すること」、そして「特定の製品に固執せず、早期に事業部門を巻き込むこと」が不可欠だと学びました。  
最初の開発は商品化に至りませんでしたが、この失敗は決して無駄ではありませんでした。
そこで蓄積された技術知識や市場への認識は失われず、約10年後のAgメッシュ型のタッチパネルへの参入と成功を支える土台となりました。  

失敗は研究開発の終わりではありません。そこから何を学び、修正していくかが重要です。
得られた技術や知識は、次のテーマを生み出すための貴重な資産になります。
失敗を恐れず小さく試して学ぶ姿勢が、新しい事業を生み出す力になると思います。

タッチパネル.jpg

今回のセミナーではAIを使った新規事業創出のやり方も公開します!

【即実践できる】
自社技術の「新規事業ネタ」の見つけ方
~特許×AIで新規事業テーマを創出する実践手法~

【ライブ配信】 2026年9月25日(金)  13:00~16:30

https://www.science-t.com/seminar/K260925.html

時代の変化が加速する中、技術者・研究者には「次に何を開発すべきか」、「自社技術をどの市場へ展開すべきか」が常に問われています。しかし、新規事業のネタ出しは個人のセンスだけに頼る必要はありません。
本セミナーでは、既存事業が停滞する理由とMOT(技術経営)の基本を整理したうえで、講師が富士フイルム時代に培った経験をもとに、
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https://fujii-tech.com/diary/244012

窒化アルミニウム、AlN。
学生の頃、磁性材料の研究で、磁性膜を配向させるための下地膜としてAlNをスパッタしていました。
当時は「Alターゲットを窒素雰囲気でスパッタして作る下地材料」くらいの認識でした。
改めて物性を見ると、なかなか面白い材料です。
ざっくり言えば、電気は流さないのに、熱はよく流す。しかも圧電性がある。という面白い材料です。

AlN物性.jpg

・GaNの下地
最近GaN関係を見ていると、AlNを下地やバッファとしてよく目にします。
実はこれは古くから重要な技術で、サファイアとGaNの間にAlNバッファ層を入れることでGaNの結晶性を改善できます。
現在でもGaN系LED、パワーデバイス、高周波デバイスなどで重要な材料です。
学生時代に磁性膜の「下地」として使っていたAlNが、別の世界でも重要な下地材料になっていたわけです。

・圧電材料
圧電材料としては地味だと思っていました。
その後PZTを研究するようになってからは、正直AlNにはあまり興味がありませんでした。
PZTという圧電材料の強者がいたからです。AlNの圧電定数はPZTに比べるとかなり小さいです。
ところが、センサでは圧電定数だけでは決まりません。
AlNは誘電率が低く、高い音速、高Q、低損失といった特徴があります。そのため高周波用途ではむしろ強みになります。

そのAlN薄膜の代表用途が、FBAR(薄膜バルク音響共振器:Film Bulk Acoustic Resonator)です。
圧電薄膜を電極で挟み、GHz帯で振動させます。この共振を利用してスマートフォンなどの高周波フィルタを作ります。 

さらにScAlNへ
そしてAlNをさらに面白くしたのが、ScAlN(Sc添加AlN)です。
AlNにScを添加すると圧電性が大きく向上し、AlNの数倍の圧電応答が得られます。
報告例ではAlNの (d33) 約5.5 pC/Nに対し、ScAlNでは30 pC/N前後まで向上しています。
これで鉛を使わない圧電材料として大きく用途が広がりました。


薄膜AlN系の用途を並べると、
GaN/AlGaNの下地
FBAR/BAWなど高周波フィルタ
MEMSマイク/振動センサ
PMUTなど超音波デバイス
エネルギーハーベスティング
ScAlNによる高性能圧電/強誘電デバイス

 

など、かなり広がっています。
個人的には、熱伝導率が高いということでもっと新しい用途があるのではと思っています。
今の半導体は熱を逃がすのが大きな課題になっていますからね。
材料の価値は、一つの物性値や用途だけでは決まらないですね。
用途や周辺技術が変われば、昔は脇役だった材料が主役になる。

面白い材料なので、次の主役となる分野を新規テーマとして進めるのはどうでしうか? 

https://fujii-tech.com/diary/241408

MOT(技術経営)とは?〜優れた技術がビジネスで選ばれない理由〜

「技術開発には成功したのに、事業としては失敗した…」
技術者や研究者の方なら、一度はそんな苦い経験や葛藤があるのではないでしょうか。
技術を単なる研究成果で終わらせず、ビジネスの価値に変えていく考え方「MOT(技術経営)」についてお話しします。

■ MOT(技術経営)とは?
MOTとは、技術を効果的に活用して経営を行うことです。 技術そのものを深めるだけでなく、市場、顧客、知財、事業戦略と結びつけ、「企業価値」や「社会的価値」へつなげていくための思考法ですね。

■ 技術が優れているだけではダメ
研究現場にいると、どうしても「より高性能に」「より低コストに」と技術そのものに目が向きがちです。
自分が得意な分野ですし、活躍の場ですからね。
ですがビジネスでは、どれほど画期的な技術でも「顧客の課題を解決していなければ」採用されません。量産性やコストが合わなければ市場にも入れない。「こんな素晴らしい技術なんだから採用しろ!」と言っても選ばれないのは当然なんですね。

「良いものを作れば売れる時代」は終わりました。
技術を深めるのと同時に「その技術をどこで使えば価値になるのか?」をセットで考える必要があります。

■ 事業を成功に導く「問い」
開発を進める際は、常にこんな問いを持つことが大切です。

その技術は、誰のどの課題を解決するのか?
顧客はお金を払ってでも解決したいのか?
既存技術と比べて、なぜ選ばれるのか?
自社が勝てる理由(知財・コスト等)はあるか?

ここを曖昧にしたままだと、「性能は出たが顧客がいなかった」「特許は取れたが出口がない」といった失敗に陥りがちです。
MOTとは、技術と事業戦略をしっかり接続するための視点なのです。

■ MOTは学びやすい時代へ
私が学び始めた当時は「MOT」という言葉も一般的ではなく、「技術者向けマーケティング」といった雰囲気でした。
いろんな方の講演を聞き、関連本を読み漁って独学で身につけたものです。

しかし、今は専門書も充実していて、本当に学びやすくなったなと感じます。
いい本がたくさんありますから、書籍を探してみてください!

■ 研修・セミナーのご案内
当事務所では、MOTの初歩的な講演と、自社の強みを活かした新規事業の「ネタ出し」をセットにした研修を行っています。
「研究成果を事業につなげたい」「新規事業のアイデア出しで苦戦している」という企業様は、ぜひお気軽にご相談ください!

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https://fujii-tech.com/diary/239682

新規事業のテーマを5件考え、そのうち1件を事業構想図にまとめる。
ここまで、生成AIを使って約15分でした。


もちろん、AIが出した案をそのまま事業化できるわけではありません。
それでも、新規事業の初期アイデアを広げる手段としては、かなり使えると感じています。

今回は、ペロブスカイト酸化物を題材に、新規事業テーマを考えてみました。
事前に市場や技術動向、社会課題などを調査しておけば、プロンプト自体は比較的簡単でも、ある程度具体的な案を出すことができます。

まず、5件のテーマ案を表にまとめてもらいました。

ペロブスカイト.jpg
さらに、その中の一つである、

「ペロブスカイト酸化物を用いた水素製造・SOEC用高耐久電極材料」

について、社会課題、技術コンセプト、用途、開発ロードマップを一枚の図にまとめました。


ペロブスカイト提案.png

ここまでの全工程で約15分です。
当然ながら、技術的な実現性、既存技術との差別化、顧客ニーズなどは、さらに検証する必要があります。
初期のたたき台としては参考にできるレベルかなと思います。
技術以外の部分として資料の構成や考え方は良いと思います。

AIで複数の仮説を短時間で出し、技術者や事業担当者が修正していけば、それなりのテーマに仕上げることができます。
今後の新規事業のネタ出しは原理原則に基づいた指示をAIに行い、

AIで可能性を広げ、専門家が事業に仕上げる。

という流れになるかもしれません。
今回紹介した方法や、さらに工夫したテーマ創出の方法については、今後どこかの機会でお話しできればと思います。

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