日々の気づき
経営者の考える失敗しない新規事業
経営者は、できるだけ短期間に、少ない投資で、大きな利益を得るような新規テーマを期待しています。
実際の所、そのようなテーマはなかなかありません。未来や市場の予測が完全ではないこと、誰もがやっていない技術開発は予測不能な項目も含まれ必ず成功するとは限りません。
そのため、経営者が期待しているように一発で成功するような新規事業開発はなかなか難しいです。
これまでの自身の経験や、たくさんの新規事業開発を見てきた感じとしては、小さくスタートさせて、失敗しながらも修正し、その失敗から知見を得ながら成功へ進む場合が多いと思います。
すなわち、成功 or 失敗 のゼロイチではなく、失敗から学び、その失敗の延長線上に成功があるようなイメージです。
図のようなイメージとなります。
新規事業を企画する部門は経営者から厳しいプレッシャーを受けて、必ず成功しかつ大きな新規事業を企画しようとしています。
しかし、そうではなく小さくスタートさせて、修正しながら(ときには失敗しながら)、育てていくような新規事業の方が成功の確率が高いと思います。
経営者を上手く説得して小さく早く進めるような企画を立案することをおすすめします。
経営者にそのような進め方の理解がなく、困っているという相談もたまにあります。そのような時は、うまく事例を説明して説得することがいいかなと思います。
私のような外部のコンサルを上手く利用して説得していくのも一つの手だと思います。
上司からダメだしを受けにくい新規テーマ提案
新規事業のWebセミナーにて社内で提案する際に、以下のような質問がありました。
「新規提案の際に上司に否定され内容にするにはどうしたらいいですか?」
提案の中身の本質的なところが最も重要なのですが、それでも反対されたり否定されたりする場合があります。その際に以下のような観点で再度資料を見直してみると良いと思います。
さて、提案には以下のポイントが入っていると良いと思います。
①会社の方針に合わせた内容
経営方針や中期経営計画などの会社の大きな方針に適していることを伝える。
提案前に自社の経営方針等を読み直して、キーワードになる言葉などを提案に入れてみてはどうでしょうか。
そして、この提案は経営方針に沿って、会社の未来を明るいものとするのですよということをしっかり伝えます。
②自社の強みが活かされていることを強調する
自社の強みが使えるということは、これまで強みを作ってきた上司、役員等々にとっては嬉しいことです。会社の先輩達が作った強み(伝統)をさらに発展させるということを述べます。反対している上司も自身が作った/携わってきたものであれば否定しにくいはずです。
③外圧を利用する
社外の人/市場の意見を入れること。有名な人などの意見などで権威付けするのもよい。
できるだけ波風立てないようにスマートに提案は通したいものですね。
なお、提案書の書き方の一つの例は書籍「技術者の逆襲」に書いてあります。ぜひ参考にしてください。
新規事業創出の具体的な事例
年に何回かセミナーを依頼にてやらせていただいています。最近はセミナー会社様以外に特定の企業様の内部でセミナーをさせていただくこともあります。その際に、「具体的な事例が多くわかりやすかった」とのコメントを頂くことがあります。
書店に行けばMBAの本や新規事業創出関連の本はたくさんありますが、概念が多く事例が少ない気がします。確かに私のように若い頃からR&Dから新規事業の創出ばかりを最前線の現場でやってきた人は少ない気がします。また諸先輩方から直に成功例を聞いてきた経験も大きいです。
講演でお話させてもらっている事例として以下のようなものがあります。
・富士フイルムでの銀塩写真から化粧品への考え方
・銀塩写真消失危機に対しての現場の動き/新規事業創出した人の考え
・セラミックス研究者が強みを生かして、食品事業へ展開した事例
・バックキャストによる新規事業創出の具体的なやり方
・知財を検索して見出す新規事業の例
・バリューチェーンから考える顧客ニーズの事例
・強み技術を活かして新規事業展開している会社の考え方
これらの事例と普遍的な成功のための考え方を交えて、腑に落ちるようなお話をさせていただいています。また、お話できないので残念なのですがコンサルティング先では新規事業がいくつか生まれており、それなりに効果があると思っています。
機会がありましたら一緒に新しい事業を生み出しましょう!
新規事業を考える視点2
新規事業を考えるときに絶対的に必要な視点は、「時間」です。
これから研究や開発をスタートさせて、ビジネスになるのは早くて1年後でしょう。普通の研究だと5年ぐらいかかると思います。未来のことはわからないのですが、科学技術やビジネス分野はある程度は予想できます。予想を含めてこれからどんな社会になるので、今のうちに開発に着手しましょうという考えです。
今ある現状の課題に対してスピードを早めて解決するというのは必要なことなのですが、それだけだと現場は疲弊しますし、対応仕事だけだとジリ貧になります。
数年後の社会を考えて、しっかりとその未来の社会に適したビジネスを提供するというのがいいと思います。そのためには時間をしっかりと意識することが大切だと思います。
未来がどうなるのかはわかりませんが、5年後の未来であればすでに予測されていることもありますし、変化の兆しが現れていることもあります。それをうまくキャッチして新規事業のネタにする必要があります。そこに自社の強みが加わればいい新規事業になると思います。
新規事業創出のセミナーやコンサルティングでは、目指す業界の未来をどうやって予想するかということを実例を交えてやっています。
自身の事業分野がどんな未来になるか考えて見ましょう。
ワクワクしませんか?
新規事業を考える視点 その1
新規事業を考える視点1
最近、MEMS関連の仕事よりも新規事業創出のお手伝いの仕事が多くなっています。ありがたいことです。
さて、製造業で新規事業を考える場合には、いつも自社の強みからスタートするように言っています。
簡単に言うと、
(強み)☓(社会潮流)→(新規事業のテーマ)
という流れで考えましょうということです。これができて、ハマると有力な新規事業のテーマになります。しかしながらそこから先に進むためにはさらに必要な視点が2つあります。その視点をしっかり考えておくことで、失敗する確率が少なくなるように思います。
それは、製造やバリューチェーンの視点です。
せっかく強い技術/優れた技術でもその技術を使ってモノができなければ商品化しません。製造適性や、後工程での使い方まで考慮しておかないと、使えないものになります。さらにコストの高い技術であればそれを上回るメリットがあるかまで考える必要があります。逆にお客様(後工程)が使いたいものであれば喜んで使ってくれます。私の経験ではどうしても使いたい素材なので、お客様が仕様を変えてくれるということもありました。
一方で注意しないといけない点として、新しいことを考えているのに、「作ったことがないから」、「やったことがないから」、「売ったことがないから」という声が工場サイドや営業などから聞こえてくることがあります。そのような声が強いと頓挫してしまいます。しっかりとマネジメントしてコントロールする必要があります。場合によっては新規事業はCVCなどを利用し外部で進めた方がいいということもあります。
話を戻しますと、新規事業を考える場合にはしっかりと後工程のイメージまで考えてテーマ出しをすると良いということです。テーマ出しするときに抜け漏れがないようにチェックシートなどを準備しておくのも一つの手です。最近はゲートシステムにてチェックするようにしているところが多いかと思います。私もコンサルティングのときに、チェックするようにしています。
さらに重要な視点があります。それについては次回。