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AIで埋もれた技術の強みを掘り起こす ― 富士フイルムの圧電特許を例に、自社・他社分析を考える ―

 

最近、AIを使って企業の技術や特許を分析する機会が増えています。
以前は、特許を1件ずつ読み、分類し、用途や狙いを整理しながら、その企業の強みや方向性を考える必要がありました。かなり時間のかかる作業です。

もちろん、最終判断は人が行うべきです。
ただ、AIを使うことで、大量の情報をまず俯瞰し、全体像を短時間でつかむことができるようになりました。

今回、富士フイルムの2010年以降の圧電関連特許を整理してみると、約600件規模の出願がありました。これだけでも、圧電が単発テーマではなく、長年積み上げてきた重要技術領域であることがわかります。これらの特許をダウンロードしてAIに読み込ませて分類してみました。

まず、全体像をざっくり見ると、次のような広がりがありました。

(以下は、公開特許情報のみをAIで整理・要約した結果です。筆者自身の社内経験はインプットしていません。)

 

まずは、AIで整理した全体像を簡単に示します。

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この結果から見えてきたのは、富士フイルムが単に「圧電材料を持っている会社」ではないということです。むしろ強いのは、圧電を実際に使えるデバイスに仕上げる技術です。
その方向性を示す特許が多く見られました。特許の中身を見ていくと、PZT系薄膜や積層体をベースにしながら、電極との界面、シード層、酸素制御、低電圧駆動、耐久性向上など、細かな工夫が積み重ねられています。これは、材料単体の性能競争というより、デバイスとして安定に動かし、量産に載せるための技術開発です。

さらに、特許の中身から見えてきた強みを整理すると、次のようになります。

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特に印象的だったのは、インクジェット関連の厚みです。
この分野では、高速駆動、耐久性、ばらつき抑制、ヘッド全体との整合が重要になります。つまり、研究室で「動いた」だけでは不十分で、壊れず、安定に、量産で使えることが求められます。富士フイルムは、まさにそこに強みを持っているように見えます。

さらに、医療用超音波や音響デバイスへの展開もありました。
一つの用途だけで終わらず、別市場へ横展開できる点も、技術基盤の強さを感じさせます。

さて、こうした分析は、他社分析だけでなく、自社分析にも有効です。自社の特許や技術資料をAIで整理してみると、当たり前と思っていた技術が実は強みであり、別の市場で価値を持つ可能性が見えてくることがあります。逆に、広く使えると思っていた技術が、実は用途の狭い技術だとわかることもあります。新規事業は強みに立脚して考えるべきであり、その意味でもこうした整理は重要です。

私自身、コンサルティングの現場では、企業の技術を整理し、その強みや抜けを見ながら、新しい用途や業界との結びつきを考える支援をしています。特に素材、部材、製造技術のようなBtoB分野では、まず自社技術の構造を整理し、どこで勝てるかを見立てることが重要です。AIはその初期整理を大きく加速してくれる道具になってきました。かなり効率よくできるようになりました。

AIが答えをそのまま出してくれるわけではありません。
だからこそ、AIで全体像をつかみ、人が技術の本質を読み解き、事業の可能性へつなげることが重要です。

これからは、AIを「答えを出す機械」としてではなく、自社や他社の技術を整理し、強みを見つけるための思考支援ツールとして使うことが、ますます重要になっていくと思います。

技術を特許という切り口で整理し、強みを見つけ、どの市場につなぐかを考えてはじめて、事業の可能性が見えてきます。自社技術の棚卸しや、新規事業のテーマ探索、他社技術の見立てに関心のある方は、お気軽にご相談ください。