お知らせ

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新規事業創出のセミナーでは、よくこうお伝えしています。

「少し良い」程度の商品は、基本的に売れにくい。
だから新規事業としては厳しい。

なぜか。理由はシンプルで、スイッチングコスト(乗り換えのコスト)があるからです。

 

研究者が見がちな価値と、採用側が見ている価値は違う

研究者はどうしても「技術の価値そのもの」に目が向きがちです。
しかし採用側は、価値を “既存品との比較” で判断します。

たとえば、ある材料の性能が 1.2倍 になったとします。
技術としては確かに良い。でも採用側は次のような点までセットで考えます。

・置き換えたときにプロセス条件は変わらないか

・歩留まりや安定性は大丈夫か

・長期信頼性(寿命・劣化・再現性)は担保できるか

・供給・品質保証・規格対応は整っているか

・評価・認証・切替え試験にどれだけ工数がかかるか

つまり、採用側の脳内では「1.2倍の性能アップ」はこう翻訳されます。

「性能は上がるけど、評価と切替えが面倒。リスクも増える。その労力に見合うほどのメリットか?」

だから1.2倍程度の改善では「見送り」になりやすい。これは性能だけでなく、コストが20%下がった場合でも同じです。
切替えにかかる工数・リスク・評価費用を考えると、「20%安い」だけでは動かないことが多いのです。

 

スイッチングコストは、思っている以上に重い

既存のものからスイッチさせるには、意外とお金と時間がかかります。
結局のところ、一通り置き換えてみて、全部チェックしないといけないからです。

この「全部チェック」が曲者で、評価が長引けば長引くほど、現場の優先順位は下がり、担当者も変わり、立ち消えになりがちです。

 

「少し良い」ではなく「これでなければならない」が突破口

一方で、「少し良い」ではなく、「これでなければ解決できない」

というレベルの価値を提供できると、スイッチングコストを度外視してでも採用されやすくなります。

よくペインニーズと言いますが、これは単なる改善ではなく、
既存品では解決が難しかった“根本課題”を潰すタイプの価値です。

・不良が止まらない

・法規制・環境対応で現行品が使えなくなる

・信頼性が足りず市場クレームになる

・生産性がボトルネックになっている

・そもそも実現できない性能を実現する

こういう“痛み”を解決するものは強い。多少高くても、切替えが大変でも動きます。

 

新規テーマは「価値仮説を顧客検証で磨く工程」になりやすい

ただ、ペインニーズまで解決できる商品は、正直めったにありません。だから新規テーマは、最初から正解に辿り着くというより、

・仮説を立てる

・試作する

・顧客と話す

・ずれる

・直す

・もう一度試す

という地道な仮説検証の繰り返しになります。しかも面白いのは、最初は見えていなかったニーズが、途中で見つかることも多い点です。

そのため、できるだけ早くサンプルを作り、顧客と対話するのが望ましいです。

最近ではこれをラピッドプロトタイピングと言いますが、まさに新規事業にとって重要な行為になります。