日々の気づき/ブログ

2026-08-13 17:05:00

圧電デバイスからパワー半導体までを支える材料「AlN」

窒化アルミニウム、AlN。
学生の頃、磁性材料の研究で、磁性膜を配向させるための下地膜としてAlNをスパッタしていました。
当時は「Alターゲットを窒素雰囲気でスパッタして作る下地材料」くらいの認識でした。
改めて物性を見ると、なかなか面白い材料です。
ざっくり言えば、電気は流さないのに、熱はよく流す。しかも圧電性がある。という面白い材料です。

AlN物性.jpg

・GaNの下地
最近GaN関係を見ていると、AlNを下地やバッファとしてよく目にします。
実はこれは古くから重要な技術で、サファイアとGaNの間にAlNバッファ層を入れることでGaNの結晶性を改善できます。
現在でもGaN系LED、パワーデバイス、高周波デバイスなどで重要な材料です。
学生時代に磁性膜の「下地」として使っていたAlNが、別の世界でも重要な下地材料になっていたわけです。

・圧電材料
圧電材料としては地味だと思っていました。
その後PZTを研究するようになってからは、正直AlNにはあまり興味がありませんでした。
PZTという圧電材料の強者がいたからです。AlNの圧電定数はPZTに比べるとかなり小さいです。
ところが、センサでは圧電定数だけでは決まりません。
AlNは誘電率が低く、高い音速、高Q、低損失といった特徴があります。そのため高周波用途ではむしろ強みになります。

そのAlN薄膜の代表用途が、FBAR(薄膜バルク音響共振器:Film Bulk Acoustic Resonator)です。
圧電薄膜を電極で挟み、GHz帯で振動させます。この共振を利用してスマートフォンなどの高周波フィルタを作ります。 

さらにScAlNへ
そしてAlNをさらに面白くしたのが、ScAlN(Sc添加AlN)です。
AlNにScを添加すると圧電性が大きく向上し、AlNの数倍の圧電応答が得られます。
報告例ではAlNの (d33) 約5.5 pC/Nに対し、ScAlNでは30 pC/N前後まで向上しています。
これで鉛を使わない圧電材料として大きく用途が広がりました。


薄膜AlN系の用途を並べると、
GaN/AlGaNの下地
FBAR/BAWなど高周波フィルタ
MEMSマイク/振動センサ
PMUTなど超音波デバイス
エネルギーハーベスティング
ScAlNによる高性能圧電/強誘電デバイス

など、かなり広がっています。
個人的には、熱伝導率が高いということでもっと新しい用途があるのではと思っています。
今の半導体は熱を逃がすのが大きな課題になっていますからね。
材料の価値は、一つの物性値や用途だけでは決まらないですね。
用途や周辺技術が変われば、昔は脇役だった材料が主役になる。

面白い材料なので、次の主役となる分野を新規テーマとして進めるのはどうでしうか?