日々の気づき/ブログ
素材系BtoBの新規事業創出について考える
最近、化学メーカーさまから新規事業創出に関するご相談をいただく機会が増えてきました。複数の企業から伺うのは、「デザイン思考」や「最終顧客のニーズ」を起点に新規事業を進めようとする取り組みが増えているということです。デザイン思考には多くのメリットがありますし、最終顧客を起点に発想する姿勢も非常に重要です。ただし、素材系BtoBの領域では、業界構造の特性から“適用のしかたに工夫が必要”だと感じることが多いのも事実です。
■ 素材BtoBは“最終顧客”が遠い
素材の世界では、最終ユーザーに届くまでに複数のメーカーや加工プロセスが介在します。また、素材は機能・性能で付加価値を出す領域であるため、素材研究者が最終顧客の利用シーンを詳細に想像することは簡単ではありません。例えばPET樹脂を開発している研究者が、最終製品のユーザーマインドを深く理解するのは難しく、時間がかかります。また、考えることができたとしても自社の課題に落ちてこない場合が多いです。
■ 私のワークショップ・コンサルで重視していること
私は、素材系BtoBでは「技術の構造化 × 成長市場探索」の組み合わせが、比較的再現性が高いと考えています。
例えばPET樹脂を開発している会社において、
・PET樹脂の特性・構造・製造工程を整理し、強みを明確化する
・その強みが活かせる可能性のある市場・用途を横断的に探索する
・既存材料の代替シナリオを検討し、技術的に成立するかを見極める
・関連特許・論文を調査し、実現可能性やホワイトスペースを検証する
といった流れで進めています。
素材領域ならではの強みにフィットした方法論として機能するものです。
■ 実例:衣料用素材が「半導体用途」に転用できたケース
過去には、衣料用途で使われていた素材を詳細に分析し、特許を数千件調べた結果、構造を少し改良することで半導体プロセスに適用する材料として価値を出せることが分かった事例があります。これは、素材特有の構造・機能に目を向けたからこそ生まれた発見でした。
■ 「派手さ」より、“業界構造に合った現実的アプローチ”を
デザイン思考を否定したいわけではありません。
むしろ、うまく組み合わせれば非常に有効です。
ただし、素材BtoBでは、
・技術の深い理解
・産業全体の構造把握
・特許・論文からの裏付け
・成長市場との適合性
といった“地に足の着いた探索”が成果を出す鍵になることが多いと感じています。
■ まとめ
・素材BtoBでは、最終顧客が遠いため適用には工夫が必要
・技術の構造化 × 市場探索 × 特許分析が相性の良いアプローチ
・素材固有の強みを活かす手法が大切
・実例として、衣料素材を半導体用途に転用したケースもあり
素材系の新規事業でお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください!
